March, 2022

50-500

これはいったい何事なのかという件である。

これはAPO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSMというシグマ製の一眼レフ用超望遠ズームレンズを愛機5D Mark IIIに装着したところである。高いレンズではない。しかももう生産中止なので中古品である。

先日,水族館でイルカを撮影して筋肉痛になった後のことだけに吾ながら救いようがない。イルカは純正のニーニッパ(*1)を使った。たかだか1.3kgちょい…それで翌日腕が上がらないほどの筋肉痛になった。もはや一眼を扱う資格がないとまで自ら言った。その舌の根も乾かぬうちにこの始末である。それがイチガンの魅力…魔力と言ってもいい。

(*1)70-200mm F/2.8のEOS-EFレンズまたはAF-S-nikkorレンズ

ミラーレスやスマホで画像を記録することと一眼で写真を撮ることとは似て非なるものだ。自然と対するときそれは顕著となる。一眼のファインダーに映る鳥は2枚の合わせ鏡に反射した実像である。ミラーレスが作る電子画像とは根本的に違う。合焦した瞬間、鳥はきっとボクの視線を感じている。指が反応して連写をかける。ミラーが上がる暗転のリズムを目が感知する。そこには生物の魂を撃ち抜く感覚がある。 二度,道東にタンチョウを撮りに行ったことがある。なんとか歩けるうちにもう一度夢の国にあのだんだら模様を追いたい。

げに恐ろしきは、ときどき純正のゴーヨン(*2)やヨンニッパ(*3)を検索していることである。新品は100万円をはるかに超えていて、古くて外観が悪い中古でも完動品なら60万円を超える値がつく。もちろんボクの経済状態では夢のまた夢の話である。まさかにポチッとする可能性は全くない。それなのに性懲りも無く気付くと中古レンズショップやオークションサイトを検索していることがある。

(*2)500mm F/4のEOS-EFレンズまたはAF-S-nikkorレンズ
(*3)400mm F/2.8のEOS-EFレンズまたはAF-S-nikkorレンズ

ある日考えた。少年時代の浜田省吾がショーウィンドウのギターを見ていたのとはわけがちがう。還暦の下手っぴカメラマンが絶対に買えないゴーヨンを検索する時間はさすがに人生のムダではないか…と。それではどうすればいいか。簡単である。サードパーティの代用品を買ってしまうことである。…と、まあ、これが50-500を購入するに至った経緯である。

さて50-500は人気の高いレンズなので中古の玉数は豊富だが一つ問題がある。100万円の純正単焦点レンズがずらりと並ぶ音羽橋(*4)や三宝寺池(*5)で50-500はいかにも肩身が狭い。なんとかぱっと見50-500とはバレない手はないかとセコい考えを巡らせた。それがこの迷彩カバーである。カバーと言っても侮れない。アメリカのメーカー品は定価1万6千円する。中華な代用品を追っていくと最安値が7千円くらい。

(*4)北海道鶴居村雪裡川にかかる橋。タンチョウの寝場所を臨める。
(*5)東京都練馬区石神井公園の池。カワセミが棲む。

アリババに登録して買い物カゴにカバーを入れる。中華のサイトを怪しんだのも今は昔、暗号化されたサイトでPayPal支払いなので危険リスクも低い。買い物の過程は全て日本語に対応していて「倉庫から出荷されました」「出国しました」「お届け先の国に到着しました。」「地域のセンターに到着しました。」「配達中です。」と6回も途中経過メールが来る。そうして届いたのがこれである。

箱は良く言えばシンプル。

説明書は英語版すらない。

カバーが届いてから肝心の50-500を探した。探し始めて5日で中古カメラショップの入荷リストに良品が出た。

装着すればピタッ!!おー♪

レンズティッシュというのが同包されていた。オマケらしい。まるで楽天のショップで買い物したときの手書きメッセージにも匹敵する細やかな心遣いである。

さて、名付けて50-500アリババスペシャル。太過ぎるためにお蔵入りしていた迷彩のブラックラピッド(*7)がピッタリ似合う。

(*7)アメリカのカメラ用品メーカー 速写ストラップの元祖

当面、使用の予定はない。安いと言っても10万円近い買い物である。妻のドレミには媚びて、購入の目的は彼女の好きな楓浜(*8)を撮りに行くためだと言ってある。

(*8)和歌山アドベンチャーワールドのジャイアントパンダ

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