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ホントは天才ではない

知人に好物のフランケンワインをもらった週末,それに合わせて久しぶりに十八番の天才ライン風シュニッツェルきのこソース添えを作った。

ホントはボクは料理の天才でもなんでもない。

ボクたち夫婦はなおみが大学1年生の冬に結婚した。几帳面な彼女は学生だということで家事を怠りたくなかった。新婚当初から掃除も洗濯も一人でした。広辞苑のように分厚い料理事典も買って来たが卵焼きすらしたことがない箱入り娘だったので料理には苦戦していた。それでもボクに料理をさせたがらない。「男子厨房に入らず」との空気がまだ濃い昭和の話である。試験前でも夕飯を作ろうとする。それを制してアパートのキッチンに立つときボクは言った。男子がむやみに厨房に入ってはいけないことは承知だが…

「オレは天才だから仕方ない。」

以来,ボクは天才を標榜している。もっともその後も毎日の料理はほとんどなおみがひとりでしている。天才の出番は二人きりの休日の晩餐とお客さんを招くホームパーティのときだけだ。それも下ごしらえや洗い物は全部助手任せ…とんだ天才である。

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