「笠はないけどお地蔵さんの雪払ってあげた(*1)から何かご利益(*2)あるかねぇ♪」
「あー!!誰かここで三脚立てたあとがあるー!」
いつでもそうだが母は騒々しい.
(*1)たんに撮影の都合である.
(*2)ちゃっかり年賀はがきで2等を引き当てて,宿泊券かふるさと小包か迷っている.とんでもない図々しさだ.
長ーい列を行ったり来たりしながら,さかんに地蔵ばかり撮っている母.ボクはこっそり目にモノ見せてやろうと,あえて淵に向かって三脚を立て,友だちの写真を思い出しながらシャッター速度をいろいろ変えたりなんかしてみた.やがて撮影風景でもスナップしておこうかと,ファインダー越しに覗いた母の後ろでみるみる青空が広がってきた.
「おふくろー!晴れてきたぞ,思い切って戦場ヶ原まで登るかー!」
「おー!」
…というわけで珍道中,まだ続きます.
後日談ですが,含満ヶ淵での母の写真には,お地蔵さまに交じって,淵の雪と岩を数個ずつ切り取ったショットが何枚もあるではないですか!
「これはシカの顔,これはクマみたいでしょ.これなんか『山犬』っていう題はどう?」
うがが,目にモノ見せられた.