18/くまとタロー

Aug, 2009

ばぶるさんの愛犬くまとタローはやたらと仲が良かった。

会ったときからじゃれあって,数時間後には仲良く玄関で寝ていた。

翌日の登山では,もう親友のように歩いていた。これはひとえにくまの人柄…いや犬柄のおかげだと思う。

←車酔いしてるタロー

ボクらから見てもタローは初対面の犬に対して傍若無人で礼を失している。相手の警戒心や感情を全く無視して,尻尾をぶんぶん振りながら「やあ,ボク,タロー!遊ぼうよ。」みたいなノリで一気に距離を詰める。十中八九は拒絶され,かじられたり喧嘩になったりする。だから仲の良い犬友がいないのだ。

くまは北海道犬のミックスで,名前は勇ましいが女の子だ。ばぶるさんたちが移住した年に生まれ,ずっと苦楽をともにしてきた。北海道犬は親指が肉球のすぐ上にあるので,一般的な犬のようにしゃきんとしたつま先立ちに見えない。

ほとんどべた足である。ちょうど人間の赤ちゃんが靴下を手に履いてはいはいしている感じになり,それがかわいい。とくにくまはフォトジェニックであどけない顔立ちなので,まるでぬいぐるみのようだ。

←後ろ姿はミッキー


ばぶる家でお昼までごちそうになり,いよいよおいとまというとき,珍しくタローが車に乗るのを嫌がって逃げた。昼ごはんの間,くまと一緒につながれていた玄関のポーチに寝そべって動かない。

海から上がるとき,野原から帰るときなら,タローもたまにこんな強い意思表示をすることがある。このときは,くまともっと一緒にいたかったのだろう。犬はけっこうテレパシーで語る能力が高い。

「さようなら,くま。また必ず会いにくるね。」

促されて,しぶしぶと車に戻るとき,タローはくまにそう約束していたに違いない。当然,タローが交わした約束の履行には,父親のボクが連帯して責任を負っている。

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