38/納沙布岬

Aug, 2009

昨夜,根室から納沙布岬までドレミの運転で夜走りしたのは他でもない。昨日に引き続き,根室地方の天気予報にお日さまマークがずらり並んでいるからだ。しかし海霧は雲量には計算されないらしい。納沙布はすっぽりと霧に包まれて,空も海も朝日もない。

ここが岬だと教えるのは,定期的に響く霧笛とカモメの鳴き声だけだ。

 

ドレミがびしばしとタオルケットなどを片付け,コロコロ粘着テープで車の中のタロ毛や埃を掃除する。手出し無用の清掃タイムはタローもボクもただ遠巻きに見守っている。ブタンガスボンベで沸かした湯でコーヒーを入れ,タローのえさもふやかした。どうも朝のコーヒーだけは販売機の缶コーヒーではもの足りない。

真夏なのに日差しのない朝は肌寒い。掃除も身支度も終えたドレミが,車に備え付けの膝掛けを肩に羽織って来た。あばたもえくぼとはよく言ったもので,ボクにはそれがとても優雅に見える。野宿の道端も,気分はリゾートホテルのテラスである。

霧の中に,記念碑や岬の標を探しながら散歩した。

 

むろん,ボクたちはモーニングコーヒーを楽しむために岬まで来たわけではない。

嘉平衛が北前船を操って渡り歩いた北方の島々を改めてここから眺めてみようと思ったのだが,いくら待ってもこの霧は晴れそうにない。

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