42/ティック!!

Aug, 2009

遭難の危機から生還し,ひと心地ついたボクたちは国道を根室に向かって走っていた。運転席と助手席の間にある大きな肘掛けに,後ろからタローが割り込んでくる。「タロー,さっきはお手柄だったな。」…頭などなでる。と,そのときだった!

 

「ぎょえー!!!」

な,な,なんだ。

「shu!タイヘン!これダニじゃない?」

タローの眉間に苺の種くらいの小さな点がある。まさしくマダニだ。

「取って!つぶして!」
「ばか,運転中だよ。お前やれ。」
「えーん。よし,えーい!!取ったー!ぎょぎょええええ!」

な,な…今度は何だ。見るとドレミの目に黒目がなかった。いかん。気を失いかけてる。急いで路肩にスペースを探して停めた。

タローの顔に他にもたくさん苺の種がついていた。さっきの草原でたかられたに違いない。函館でフロントラインをしたばかりである。マダニたちは苦しみながら,少しでも薬の薄い顔に集まりつつあるのだ。

タローこそあわれであった。正気に戻ったドレミの気迫に圧倒され,アスファルトの上で仰向けにばんざいしたまま動かない。

 

その長い毛を一筋ずつ根気よくかき分けて,マダニを探してゆく。今度は蛙のごとく腹ばいになった背中を捜索する。二人で15匹ほども退治しただろうか。さらに,朝掃除したばかりのシートをすべて下ろして同じ作業をした。

どうも今日は厄日だ。

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