タロー行進曲2008/2才2008/7/21

カレンダーの具合で、今年は講習突入の前に、2連休が取れた。ひたすらオフにして過ごした。

キャンパスを13枚張った。お盆休みにどこにも出掛けず、東京としらべ荘で過ごすことになったので、ちょっと気合いを入れて描こうというわけだ。ホントはまた北海道に行きたかったけど、財政担当のなおみが、「今年はオクラホマやレーシック手術で出費がかさんだからムリです」と、強硬に言い張るので、おとなしく従うことにした。冷夏、雨続きで出掛けるのを断念した2003年を除けば、10年ぶりのことだ。その10年前、ボクたちは教室の移転に合わせて、なおみの留学と一年間の休業を計画していた。節約して、お金を貯めるためにお盆休みの間、毎日図書館に通って英検の勉強をするという受験生みたいな夏を過ごしたっけ。

梅雨明けした東京の昼間、タローの散歩には過酷だ。去年買った水に浸すタンクトップを着せてワントゥに出る。


キャンバス張りは描き損じたキャンバスの釘を一本一本抜いてはがすことから始まる。描いたときの苦労といっしょに、どこでどう失敗して、ヴァルールが破綻したのか、構図のバランスが崩れたのか、ありありと見えてくる。はがれる麻布といっしょに心もはがれて痛む。なんでこんな辛い思いをしてまで描くのかな。


好きだから、描きたいからだ。

そう自分に言い聞かせる。張り機をつかむ右手が痺れてきた。老齢のA先生もこうして張ってるのかなぁ。張り終えたキャンバスを指ではじくと、ポンポンといい音がする。今度こそ、先生が見てうなるようなのを描いてやる。13枚を張り終えて、キッチンに行くと、なおみがボクの水彩道具を持ち出し、茄子やピーマンをテーブルに並べている。

「さ、早く教えてよ。」

結婚して20年、一度も絵を描いたことのなかったなおみが、今年は絵を習いたいという。どういう心境の変化かわからないが、この夏を「アーティスティック☆サマー」と名づけることにしよう。まあ、それも明日から始まる地獄の講習を乗り越えたあとの話だが…。


今日描いたなおみの処女作「茄子とピーマンのある静物」は、初めてとは思えないほど、よく描けているのだが、本人が恥ずかしがって公開を拒否しているので今のところお見せできない。

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