あっけなく灰になってしまった父を車に乗せた。
骨壷を納めた箱はずしりと重くまだ熱かった。
今月に入ってから,もう腎臓がまったく働いていなかったのに,父は死ぬ直前まで必死に生きようと呼吸していた。
何度かワントゥに出してもらった他は,ずっと車の中に待たされていた2頭の犬が,もはや懇願するようにきゅんきゅんと鳴く。
さすがに不憫になったボクたちは,更衣室に戻るのをあきらめて,斎場の裏にある河原に車を回した。
薄暮の雪原に飛び出していく2頭を見ながら吹きさらしの土手で喪服を着替えた。
父がかわいがっていたマロンが心なしか元気ないように見えるのは気のせいだろうか。
こちらうっぷんを晴らすかのように必死で雪遊びするタローの方は明らかに全く何も感じていない。
残照に山々が青白く峰を光らせた。
…この地の風景は哀しいほど美しい。