OUR DAYS2008年2008/5/31

雑踏が苦手なボクにとって、デパ地下なるもの、ほとんど苦行の場に近い。やむなく通過するときなど、息を止めて小走りするほどである。それが先日行った新宿Tデパート地下の全国名菓子コーナーには驚かされた。その日、予定のなかった雨の日曜日。ふと、

「高校生の学参を買いに紀伊国屋に行かないとなぁ。」

と、もらしてしまった。妻のなおみがそのチャンスを逃すはずがない。たちまち、新宿お買い物デーのタイムテーブルが作られた。

西口ショッピングモール→紀伊国屋→デパ地下→サザンテラスのスタバ→南口ショッピングモール(時間略)

「な、なんじゃ、こりゃ。とほほ。」

ほぼ、なおみが一人でお出かけするときのコースである。これだけ歩いて、ケーキ一個とかカットソー一枚とか買って帰ってくる。できれば、目的の売り場までの直線コースをピストン運動で往復したいボクには、全く理解不可能な行動様式だが、鼻歌など歌いながら出かける彼女を見ていたら、「たまにはつき合うか」という気になった。

最初のショッピングモールで、洋服屋さんに立ち寄るたびにボクの機嫌や体調を窺う妻が少しかわいそうになったのでボクは考えた。

「よし、今日はお前に100にこにこポイントをあげよう!」
「何ーそれぇー!」

文字通り「にこにこポイント」である。ポイントを使い切るまでは機嫌良くにこにこ待っているので、気兼ねなくショッピングしてくれという目安である。

「今の買い物は何ポイント?」
「8ポイントだな。」
「えー!?節約しなくっちゃ。でも、本屋はシュウの用なんだから、ポイントは減らないよね。」
「残念ながら、にこにこポイントは共通だから、やっぱり減る。」

そうこうするうち、紀伊国屋を出た頃には残り僅かになっていた。

「うーん、残念。あと、30ポイントじゃ、南口モールかデパ地下か選ばないと…」

これで真剣に考えている妻はさすがに愛おしくなる。結局、彼女が選んだのが、本題の「デパ地下お菓子コーナー」であった。以前からよくそこでお菓子を買ってきていて、どうしてもボクを連れて行きたかったらしい。

なるほど、全国の和菓子が集まっている。しかも、ふだん興味のないボクが見ても、お菓子から並々ならぬオーラを感じる。松江○○堂とか会津若松△△屋とか居並ぶ屋号も只ならぬ気配を醸す。信州の棚を探してみると、果たして新鶴の塩羊羹があった。毎月一回入荷とある。頑固一筋、諏訪大社秋宮の本店でしか売らなかったあの店をいったいどうやって口説き落としたのだろう。義祖母の大好物、山形の富貴豆もあったので彼女のために買った。他の品揃えも推して知るべし。これらを集めたバイヤーのなんとも凄まじい腕前であることか。

が、そのわりには客足はさほどでない。こんな豪腕企画が受け入れられるかどうかはまた別問題らしい。本日入荷と書いてあった福岡の栗饅頭を買って帰ったが、確かにそれほど感動する味でもない。名物とは、このような形で土地と切り離してはいけないものらしい。


こちら、なおみ堂の「タロークッキー」…焼きたてをヨコからつまむと、栗饅頭より美味かった。


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