昨年,見事難関K高校に合格して卒業したムンクのお母さんが教室を訪ねてきたのは初夏のころ。ムンクは英語もピアノも得意だが,美大を受けたいらしいとおっしゃる。「本気なら,予備校に通えるレベルくらいまでのデッサンや平面構成を教えてやるぞ。」と,彼にメールを送ったのはお盆休みのときだった。少しやり取りをしてそのまま音沙汰がなかったが,暮れになおみが
「もう一度,ムンクにメールしてやって。」
と,言うので「美大はあきらめたのか?」とメールした。が,返信がない。高校受験生の頃からだらしなくて,十分にトップ校レベルの力がありながら,ぎりぎりまで本気モードに入らないものだから,数学の問題に力負けする形で,不完全燃焼の入試になった。
それが新年明けて,大忙しの講習真っ最中,
「デッサンの道具は何を買えばよろしいんで?」
というとぼけたメールが入った。どうやら,何も知らないらしい。結局,過密日程の日曜午前中に新宿世界堂(画材店)に付き合う約束をした。
当日,予想通り20分近く待ち合わせに遅れてきて,
「すみません。風邪ひいて…」
と,大きなマスクの下から言う。が,5年生のときから教えてたかわいい教え子には弱い。大急ぎでカルトンや鉛筆を購入する手伝いをし,ボクも水彩紙と練りゴムを買った。いっしょにやってやらないと,またぞろ,高3までだらだらとしそうだ。美大受験のレベルでなければ,早めに切り替えさせなければならない。
と,言うわけで,久しぶりに本格的なデッサンに取り組むことになりそうだ。この年でごまかしのきかないガチンコデッサンはきついなあ。