OUR DAYS 2009/3才2009/1/25

土曜の残業が終わってから行くと,しらべ荘に到着するのは午前3時ごろ。温度計は氷点下10度を指している。最初に雪に埋まった止水栓を掘りあてて水道を開栓する。なおみは家中を駆け回って,圧を抜くために開けてある蛇口から水が出るのを,チェックしながら閉めていく。管が破裂していることもあるし,排水溝やパイプが凍っていて,シンクから水があふれることもある。それでも10年前に比べたら,寒さはずいぶん柔らかくなった。

石油ファンヒーターのしょぼい温風を気休めにしながら,ストーブに薪をくべる。柱がガラスが床が煙突が,みんな氷点下に凍てついているから,ダウンジャケットを脱いで動けるようになるまでには小一時間かかる。


翌朝,つららが落ちる音や鳥の声を聞いてはタローがむふむふとベッドに鼻を突っ込んでボクたちを起こそうとするが,無視して朝寝坊する。持参した餅をインスタント味噌汁でお雑煮にして朝食をすませ,午前中は美濃戸(登山口)あたりに出掛けて,馴染みの散歩道でタローを遊ばせる。


楽しすぎて,たいていお昼を食べ損なう。今日もお昼がわりに缶コーヒーとおさつスナックを分けて食べた。そのまま村に下りてゆく。役場のすぐ近くに,「レタスのおじさん」の家がある。お土産など持って訪ね,明治17年築の居間に上がりこんでお茶を頂く。お茶請はおばさんの干し柿かお漬物だ。


ボクらは二人っきりで原村の休日を過ごすときはいつも,ここか菊池華田の温室を訪ねて村の雰囲気を味わう。


それから役場の向かいにあるAコープで鍋の材料などを買う。荷物を車に積みながら振り仰ぐと,阿弥陀岳や蓼科山に夕日があたって美しい。15年前,この駐車場で同じ山を眺めながら,ここに土地を買うことを決断した。


帰宅して掘り炬燵に入り,近くの温泉が割引料金になる時間をぼおっと待つ。雪遊びに疲れ果てて脇でのびているタローの寝息と,ときどきなおみが文庫本をめくる音以外何も聞こえない。冬の間は,葉の落ちた木立の間から入笠山がよく見える。その稜線に夕日が沈む頃,タローをおいて湯にでかける。あったまって,降るような星空の下を帰ると,あとは鍋で芋ロックをぐいっとやって眠るだけ,これがボクたちの原村で過ごすスタンダードな休日です。

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