OUR DAYS 2009/3才2009/4/17

深夜11時過ぎ,西新宿交差点近くに停車する。車の中で勇ましいトレーニングウエアに着替えたなおみがここから自宅まで2kmほどをウォーキングして帰るのだ。

ところが最近,お供のタローが降車を拒否する。3才のゴールデンレトリバーが雨でもないのに散歩を嫌がるのは異常と言わねばならない。どうやら,この夜歩きが楽しい「散歩」ではなく辛い「トレーニング」だということに気付いたようである。同じ時間でもボクと散歩するのは大好きだ。鼻の赴くままに風を追ったり,人気のないブッシュでもあれば,潜り込んだりして遊べるからだ。一方,ここでなおみと降りても,ほとんど小走りに近いスピードでひたすら歩くだけなのである。

降車拒否と言っても頑なにうずくまって動かないわけではない。開いたドアと反対方向を向いて,顔はにっこり,お尻くねくね,尻尾はぶんぶん振りながら,

「ボク,車の中好きだなー♪乗っていたいなー♪」

と,アピールするのだ。まったく悪賢いというか,よく知恵が回るものである。いよいよなおみに促されると,運転席のボクにむしゃぶりついてくる。

「かんべんしてよぉー」

の目で訴える作戦に出るが,アピールむなしくしびれを切らしたなおみに叱られてすごすごと車を下りる。やがてずんずん歩くなおみの後ろを,あたふたとついて走る姿が遊歩道の闇に溶けていく。

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