OUR DAYS 2009/3才2009/6/17

車でCDを聴くと,自動的にHDに録音されて,次からはワンタッチでHDから再生できる。いやはや,時代は変わった。トランクに20連装CDチェンジャーなんてつけてたのも今は昔,カセットテープなんて知らない人の方が多いくらいだ。

録音された曲をランダムに再生することができるので,意外な曲の組み合わせが起こる。「ダンシングクイーン」のあと,唐突に「思えば遠くへ来たもんだ」が続くなんて,演奏した人もプロデュースしたスタッフも想像すらしなかったろう。

車で何を聞いても自由だが,窓を開ける機会の多いこの季節は少々体裁が気になる。先だって,狭い幹線道路で上下線ともの渋滞に入ってしまったとき,さっきまで浜田省吾を演奏していたHDがよりによって,次にウイーン少年合唱団の「ます」を選んだ。静かにアイドリングしている渋滞の車列に天使の歌声が流れ出す。

曲をスキップしたり,急に窓を閉めたりするのも不自然なので,ボクはサングラスをしたまま,知らん顔を決め込んだ。録音した張本人は助手席で鼻提灯をふくらませている。50cmの距離に対抗車の窓が開いていた。小洒落たグリーンのミニに耳輪や鼻輪をした小僧が一人,涼やかに乗っている。ボクは開き直って,

そうだよ!オレはウイーン少年合唱団の大ファンなんだよ!文句あるか。

…的な表情を装っていたが,ふと気づくと,ミニのスピーカーからは八代亜紀が流れていた。心なしか耳輪男も気まずそうにしている。

列が動き出すまでの1分あまり,真っ赤なスパイクとグリーンのミニクーパーは,並びながらドイツ語と演歌を鳴らし続けた。

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