なおみのファッションは春夏秋冬、ロングスカートにローヒールである。流行には全く無縁だが、流行の方からすり寄って来る年が周期的にある。店がロングスカートばかりになると、洋服選びが容易になって良さそうなものだが、さにあらず。教え子や卒業生たちまで、みな同じ格好になるので、うっかりすると「子どもとお揃」という事態が起こるからだ。
休日に腰痛のボクを放置してショッピングに出掛けたなおみが
「もう、たーいへん！みんなワンピースのロングなの！」
と、ぼやきながら帰宅した。どうやら今年はなおみファッションがトレンディになっている模様である。
ぼやいているわりには、抱えきれないほどの紙袋から、次々と本日の戦利品を取り出して来てファッションショーを始めた。
「これがいちばん高くて６千円。なかなかいいでしょ？」
「グーッド！！すんばらしい！！今、なおみから春風が吹いてきたかと思ったよ、なあ、タロー。」
もちろん洋服ごとに歯の浮くようなことばを考えては賞賛することを怠ってはならない。なぜなら甲斐性なしの夫としては、一番高くて６千円のショッピングで満足してくれる妻はたいへんありがたいからだ。それに言うまでもないがロングスカートにローヒールは本人の趣味というよりボクの好みだからだ。