先月NYCで急死した伯父を偲ぶ会が出身校のO大学の講堂を借りて行われた。ボクは写真係だったのでけっこう忙しかった。
タローは式の間、特別に入れてもらった大学の庭で大人しく待っていた。
それにしても大学の偉い人というのは演説が好きな人種だ。よくお悔やみの席であんなに長く話せるものだと感心してしまう。しかも話の6割くらいは自分のことである。
極めつけは、乾杯も終わって立食パーテイが始まってから演説に立ったペンシルバニア大学教授である。出席者全員が思わず食事を中断する雰囲気の中、通訳を介して軽く30分は演説していた。
ボクはカメラマンの立場を利用して会場内を移動し、エイミーのところに行ってこっそり話をしたり、なおみを脱出させてタローの様子を見に行かせたりした。
それからmegumi伯母の姿を見つけて、その椅子の脇に座り込み、口に手を当てて内緒話を促した。伯母は後ろから両手でボクをぎゅっと抱きしめて耳を寄せてくれた。ボクはこの心優しい伯母が好きである。
同じNYCに暮らしながら、伯父と伯母の仲は悪かった。それぞれの家族同士もほとんど交流がない。きっと伯母もお偉い大学教授が苦手な口なのであろう。
ボクは伯母の耳に日本語で囁いた。
「大学教授の話ってつまらなくて長いですね。」
伯母は目を丸くして、それからにっこりウインクした。