元日、お雑煮を食べてから、安曇野まで白鳥を撮りにゆこうと母を誘った。
父の面倒をなおみが見ている間に、母を気晴らしに連れ出せる撮影スポットならどこでもよかったのだ。
ところが、父にも「行くか?」と尋ねてみると、「行く」と答えたのにはびっくりした。撮影行は、俄かに4人と犬2匹のにぎやか団体旅行となった。
白鳥湖に着いても、父は車を下りるわけではない。もはやそういう意欲そのものを持っていないのだ。
車が走っている間もじっと前方を見ているだけだ。楽しいのかどうかもわからない。
だが、かつてはよくこうして4人で家族旅行した。これが最後かもしれない。帰宅して、ボクは母に言った。
「いい正月だったな。」
母は答えた。
「いい正月だったね。」