OUR DAYS2011年2011/2/28

「今年はキチンと歌えそうよ。」

…と、なおみが言ったのは、毎年、お別れ会で卒業生たちに贈る歌を練習中のことです。ボクが作詞、なおみが作曲したオリジナルの歌で、それぞれのソロや斉唱の部分があり、サビはずっとハーモニーです。しかし、もう長いこと本番でそのように歌われたことがありません。なおみが泣き崩れてしまうので、ボクの独唱になるからです。それが今年は泣かずに歌えると言うわけです。

中3の授業が不完全燃焼のうちに終わっても、毎年恒例とはありがたいもので、スケジュールやその準備に支障はありません。「最後の授業」、「採点、見通し」など、大きな行事は滞りなく淡々と進み、ついにお別れ会の当日を迎えました。そしていざ、子どもたちの前に立ち、40の瞳に見つめられたとき、ようやく気づいたのです、子どもたちはいつも変わらないということに。

不完全燃焼も子どもたちのせいではありえません。そんな当たり前のことに思い至りながら、ボクは別れの言葉を選び、最後にアルペジオの前奏を弾きはじめました。

出だしはボクのソロ、そしてサビにかかりましたが、3度上を歌うはずのなおみの声が今年もありません。きっと彼女も同じことを思っていたのでしょう。なおみのソロ、最初の一音を発音したきり、嗚咽を飲み込んで声になりません。横目で見るともう泣き崩れています。結局、例年通り、歌はボクのソロで終わりました。

リッツパーティと徹夜で編集した合宿写真のスライド上映が終わると、子どもたちがボクたちに寄せ書きをプレゼントしてくれました。その中に、最後までボクたちを困らせ、はらはらさせた女の子の文もありました。

宿題もやらず手のかかる子だったと思います。でもきらわないで下さいね!私は将来、なおみ先生になります。「みたいになりたい」ではなく、なおみ先生そのものになるのです。いままでありがとうございました。大好きです。

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