OUR DAYS2011年2011/5/15

となりのタエちゃんがトントンとサッシの窓を叩く。戸を開けるとタローとタエちゃんが何かを訴えるように並んで立っていた。

「shuさん、タイヘン!」

タエちゃんがそう言って耳を寄せるように手招きする。タローとタエちゃんの「タイヘン」はタイヘンだったためしがない。その二人が揃っているのだから、どうせろくでもないことに決まっているのだ。

「タローがね、タイヘンなもの発見しちゃったのよ!あたしに地域の危険を教えたのね。ん、もぉー、タロったらなーんて賢いのかしらん♪」

タエちゃんが話すと言葉の語尾にはたいてい音符がついている。

「あ、そう」

と、答えてPCのマウスに戻そうとした右手をいきなり掴まれて庭に引きずり出された。

「あそこの家の奥の庭で麻薬の栽培してるのよ。」
「ま、麻薬?」
「タローがガラスの栽培施設を見つけてあたしを呼んだの!」
「施設?」
「見ーてーきーて!」

有無を言わせぬ強い無声音である。大きな目は三角に見開かれ、眉間には縦シワが2本入っている。ボクは渋々つっかけ履きで表に出た。タローが「こっちこっち」的に家と家の隙間の前で待っている。振り向くとタエちゃんが三角目のまま無言で頷く。

仕方ない。ボクはタローの後ろについてその隙間に入っていった。こういうスペースを建築用語では文字通り犬走りと呼ぶらしい。突き当たりが裏の家、麻薬密造容疑者宅の庭だった。

大きな書類ケースを大掃除して水洗いしたらしい。透明プラスチック製の引き出しが幾つも干してある。乾きやすいようにと考えたのだろう、引き出しはみんな雑草の上に伏せるようにして並べてある。ミニ温室状態になっているケースの中で、カラスノエンドウがゆらりと揺れていた。

ボクは無言のままきびすを返した。どうせ、ろくでもないものだとは分かっていたが、予想を上回るくだらなさであった。

タローとタエちゃん、名コンビである。


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