「もしもしー、わたくし、NT○コミュニケーションズ代理店○○の△△だったんですけどぉ、こちらイマムラさまのご自宅の方でよかったでしょうかー。」
「…」
勘弁して欲しい。過去形の変な敬語で営業電話して来るのは本当に勘弁して欲しい。応答する力が萎えるばかりか、今日を生きるエネルギーすら吸い取られる。
「はあ、現在でもそうですが…」
多少皮肉混じりながらも紳士的な返答をするまで、ボクがどれほどの意思力と精神力を要したか、電話の向こうの小僧は分かっているのだろうか。
「あっりがとうございまーす!!!」
来た。必殺の攻撃である。ボクの皮肉をこめた拒絶の意思表示はあっさりスルーされ、ウチの電話がウチの電話であったことが、なぜに力強く有り難いのか。もはや言葉の暴力である。
プラチナなんとかのマイラインがどーだらこーだらで
「…のご案内だったのですがー。」
「そうだったんですか。で、現在のこの電話の用件は何でしょうか。」
…こんなふうだから、なかなかプラチナなんとかに加入できず、未だに高い電話料金を払っているようだ。高くても結構である。「コミュニケーションズ」を名乗りながら、日本語が不自由な輩と契約するのは承服しかねる。
不安もある。
「ら抜き」や「絵文字」がそうだったように、いつの間にかスタンダードが奴らの側に移って、本来正しいはずのこっちが「頑固」「古い」「心がこもっていない」と散々な評価を浴びることだ。いや…「頑固」とか「古い」までは甘んじて受けるとしても、奴らの妙な敬語表現が正しくなって、ボクの方が間違いの無礼者にされてしまうのは耐え難い。
だが、言葉というものはそうして変化していくものなのだ。
…それって、マジ、ムリだし。