OUR DAYS2012年2012/7/8

休日の午前中、慣れない電車での所用から帰宅すると、もともと体調の悪かった二人は揃って青息吐息。バッタリと気絶するようにベッドに倒れこんで気づいたときは夕方だった。

「ありゃー、こりゃもう、今日の予定こなすのはムリだよ。午後の予定はキャンセルしよう。」

そうしてポッカリと空いた夕方、ずいぶんと眠って少し気分も良くなったので、城南島公園まで散歩がてら出掛けることにした。

先日、旅客機を専門に撮っているルークオザワさんというプロカメラマンをテレビで見た。その陽気で楽しい人柄に魅せられて、これまで全く興味のなかったヒコーキの写真を撮ってみたくなったのだ。

飛行機ではなくヒコーキなんだそうな。

羽田と聞いて、ビッグバードのショッピングモールをイメージしていたなおみは目が点である。

「な、な、ちょっとシュウ…」
「おっと、オレのことはルークシュウと呼んでくれ。」
「そうじゃなくて…」
「あ、ここね。羽田近くの公園である。そしてもちろん、なおみにも任務がある。」

F4-300+1,4×を装着した7Dを袈裟懸けに、70-200装着の5DMK2は三脚に取り付けながらボクは言った。

「あそこの浜でアサリ採ってこい。今夜はそれで白ワイン飲ろうぜ。」

浜には子どもだましのショボい潮干狩りスペースがあるが、遊んでいる家族連れも本気で貝が採れるとは思っていないフシがある。ちっとも採れないものだから、なおみもすぐに飽きてベンチを見つけて読書に入った。

にわかルークはと言えば、…いるいる、あっちにもこっちにも思い思いの望遠レンズをつけた大勢の常連ルークたち。対岸に横たわる羽田空港C滑走路から北に離陸(スリーフォーレフト)する機体を追い、揃ってラジオ体操のように180度の弧を描くレンズの林。

その体操に参加するほどに、結構無心で楽しめる。けれどもにわかルークが体操団と決定的に違うのは、ヒコーキについて全く知識がないという点である。どの機体も区別がつかないものだから、早々に飽きてきて別の被写体に目移りしている。

北海道に向かう黄色と水色のラインを持ったエアドゥ機にだけはちょっと旅情を誘われる。

あたりが暗くなってきた。

砂浜が施錠された。A滑走路スリーフォーライトの着陸機を狙ったところで望遠7Dをあきらめる。

スローシャッターには、残照の空が明るすぎるのでND8を使って離着陸機の光跡を写す。

ほんの数カットの後には、空も急速に暗くなり、ND8の出番も終わる。機材の設定が忙しい。夜景になると、空港に比べて周りが暗すぎる。そうだ!東側の岸壁に移って、都心方面の光を撮ろう…はっと我に返る。

あんなに人が大勢いた公園にはもうボクとなおみ以外誰もいなくなっていた。

東側まで歩いてくると、めばる釣りだろうか、岸壁にはずらりと釣り人が並んでいた。こちらはこちらで、また専門用具を競うような本格派ばかりである。きっと高価なキャストやリールはレンズ並みの値段がするのだろうが、釣れているのは巨大なボラばかりで、専ら野良猫にふるまわれていた。

竿受けの間に、暫しお邪魔してスリック813FAを立てる。空が暮れ残って夜景が美しい。まだ、撮っていたいけど、そろそろ仕舞いにしないと、さすがのなおみもむくれるだろう。どだいヒコーキ撮りもめばる釣りも女房同伴で来る人はまずいない。

アサリはスーパーで買って帰ろう。海風がけっこう冷たかったから、白ワインはやめて焼酎をお湯割りしようか。

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