タローは隣のタエちゃんが大好きである。隣のタエちゃんは美人でタローをとてもかわいがってくれるからだ。隣のタエちゃんが仕事から帰ってくると、なぜかタローはすぐに気づく。だだっと庭に面したサッシ戸のところまで走って行って
「うおおおおおおん!!」
と、鳴くのである。ふだん、「ふぐぐぐ」とか「きゅんきゅうんきゅん」としか言わないタローが、これだけはっきりと吠えることはめったにない。
さすがに隣のタエちゃんも、今夜はタローの必死さにほだされたのか、
「シュウさーん、タロー、ウチに借りて行っていい?」
と、庭づたいにやってきてくれた。やさしい子である。タローは狂喜、小躍りしてタエちゃんの後ろについて隣のウチに遊びに行った。
…15分である。
たった、15分でタエちゃんが戻ってきた。一緒にお布団で寝たとたん、がばりと立ち上がり、そわそわとドアまで行ったそうである。きゅんきゅん言いながら、とうとう自分の鼻で戸を開けて階段を駆け下り、玄関で、
「開けてよ。」
と、タエちゃんを見上げるのだそうだ。
「あたしがいい子いい子してるのに、15分でホームシックになるとは、タローもずいぶんじゃなーい!!」
隣のタエちゃんがフンガイするのも尤もである。