OUR DAYS2012年2012/12/23

ジェットコースターで滑り降りるとき、胃がスッとなる。あの、スッとと同じような感触が腰骨に走るのである。

スッ。

もう、それでいけない。半年ぶりのぎっくり腰が来た。三日前の夜のことである。ただ車から降りようとしただけなのに…。帰り道、レリーズも三脚も装着したカメラを後部座席に準備して、上弦の月の入りを狙っていた。そりゃ少しは急いで降りようとしたけどさ。そもそも路肩に車を停めて、悠然と降りる人なんていないのだから、これを油断と言うのはあまりに憐れである。ま、普通の人はご存じないと思うが、ぎっくりはやってから、そう、20分くらいは結構動けるものである。ちょうど、筋肉がゆっくり攣ってゆくときのように、次第に痛みが増し、やがて動けなくなる。

どれ、ここは黙ったまま、月をやっちゃうか。

ベテランギックラーの余裕をカマす。どうせ、今更大事にしても結果は変わらない。動けるうちは動いてしまおう。助手席でメールなんか打ちながら待っていた妻が異変に気づいたのは、ボクが撮影を始めてからのことである。腰が曲げられないものだから、ファインダーを覗くのに、足を大きく広げたスポーティな姿勢になっている。通りかかった若いOLが、それに興を覚えたものか、バッグからデジカメを取り出して、月と三脚とボクをフレーミングしている。窓から見ている妻はボクがスポーティカメラマンでないことを知っている。不審そうにゆっくり車から降りて来て、こちらに歩きながら状況を把握した。

この一ヶ月、ボクはひどい風邪を引き込んでいた。犬の散歩やシャンプー、ちょっとした外回りなど、ボクが担当の家事や仕事が、ただでさえ忙しい彼女にずっしりとのしかかっていた。ようやく風邪が治ってきた矢先のことである。ボクを肩に担いで車に運ぶ妻の目が、呆然とほとんど白目をむいている(笑)

帰宅した頃にはすっかりぎっくりも仕上がり、翌日は車椅子に乗って病院へ。

「先生、あしたギターを弾きながら歌って踊るトナカイになるんですけど、何とかしてください。」
「ムリです。」

現在、トナカイの衣装を前に直立歩行もままならない。

仕方ないので、トナカイからもみの木に降格して何とか切り抜けた(笑)

 

立って歩けないので、準備も片付けも全部なおみと子どもたちがした。
座っているのは買ってきた丸椅子。 座薬はちっとも効かなかった。

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