休日，ボクたちは町田コダーイ合唱団定期演奏会の日程を検索していて，大熊進子先生が去年，お亡くなりになっていたことを知った．ご病気だったらしい．町田コダーイ合唱団はかつてなおみが所属し，ボクたちが出会った場所だ．先生が亡くなって去年解散したらしい．致し方ない．恐ろしく水準の高いコーラスなので，指揮者の替えはなかろう．
破門されたとはいえ，1年以上も知らなかったことには忸怩たるものがある．なおみにとってはカリスマ的恩師であり，ボクは個人的にとてもとてもかわいがってもらった．2ヶ月近く，先生と二人で東欧を旅した．
訃報に接し，できることは何もなかった．ショックで落ち込むなおみを励まし，ボクたちは新宿の洋酒専門店に行ってトカイワインを買った．
そして「チルケ・パプリカ」を作って先生を偲んだ．
チルケ・パプリカは進子先生がとても好きなハンガリー料理だったが，料理が上手ではないので，いつも作るのはボクだった．先生はたまねぎをむいたり，チキンの筋を切ったりして手伝った．そのいたずらっぽく，くりくりした瞳が忘れられない．