OUR DAYS2013年2013/12/16

冬の間東京で暮らす母を迎えに行き,村の人たちに挨拶して回った.母が菊池華田でとっておきの赤いシクラメンを買うと,どっさりりんごを持たせてくれた.次はそのシクラメンをひとつ持ってレタスのウチに行く.

レタスのおばさんがかぼちゃやら漬物やらお土産を見繕ってくださっている間に裏の畑に登ると遠くの田んぼから鳥が飛び立った.母は庭先で歩行訓練しているレタスのおじさんに「お元気で」と何度も何度も挨拶している.

腰が90度曲がっているギガンチウムのおばさんは大きな家にひとりで暮らしている.母の両手を自分の両手でぎゅうっとつかみ,寂しくなるとぽろぽろ泣いた.ボクは春までお元気でと別れ際にジャンプしながら両手を振った.おばさんは驚いて涙目のまま笑った.痛めている腰が少しぎくんとなったが,ボクも思い切り笑った.出掛けに腰はぜったい安静にと釘を刺していたなおみもこのジャンプは仕方ないと言うだろう.

原村に冬が来る.

ミズイロライフのバッテリーを外し,水道を落とし,家を閉めていると,近所のあひるさんが甘く煮た小豆を持って来てくれた.そして彼女もまた,湯気の立っているあんこを母に手渡しながらぽろぽろ泣いた.

母が村を離れるのはたった3ヶ月なのに….

最後に父の墓に詣でると,花立には母が作ったドライフラワーが挿してあった.これならば冬の間も華やかだろう.墓に手を合わせ,高速が渋滞しないよう,お昼には東京に向かった.

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