日曜補習を終えてから,ひたすら中央道を走り,原村までノンストップで行った。風呂場回りの修理を頼んでいる大工さんの家族に,生ケーキを届けたかったからだ。
無事に大工さんの家を見つけて届け物をしたあと,しらべ荘に行ってみると…晩秋にもかかわらず,久しぶりにカマドウマの大発生を許したらしく,家の中は大惨事だった。なおみが掃除機を使って死骸を片付ける。何度も悲鳴が上がるのは,瀕死ながらまだ生きているカマドウマにときどき遭遇しているのだ。ボクはストーブに薪をくべたり,生存していたカマドウマを退治したりした。結局,時間が遅くなり,お店はほとんど終わってしまったので,諏訪まで下りて王将餃子に行くしかなかった。
夜明け前に目を覚まし,薪を足したりしたら,目が冴えてしまったので撮りに出ることにした。なおみを起こさないようにそっと靴を履いていると,タローが後ろにぴったり寄ってきた。
「いっしょに行くか?」
どこに行くか迷っているうちに東の空がみるみる明るくなってきた。猶予はない。富士山は霧に隠れてみえない。シッポを振りながら勇んで車に乗ったタローはもうバックシートで夢の中に戻っている。山麓を回り込むように走り,ダメもとで観音平に登る林道に入った。鹿が多くてスピードを上げられない。
ようやく展望所にたどり着くと,雲海の上に富士がシルエットになり,その真上に24日月が明け残っていた。
タローが眠そうに起きてきた。
ボクも眠くなってきた。
大工さんは三重からのIターンだそうだ。色々な面でボクたちがIターンを目指して原村に来たときよりずっと状況がよくなっている。ボクらはいつここで暮らせるのだろう。
三人で見上げているのはストーブの煙突。夏に煙突掃除をしたとき,ボクが下から突き上げて少し傾いでしまった。今のところ大丈夫ようだ。
暮れの恒例,菊池華田。母の代理でシクラメンやリンゴの手配をする。
今年もお世話になりました。来年もどうぞよろしく。
いつでも気軽に墓参できる。やっぱり浅草から移転してよかった。
レタスのおばさん,食べられるほおずきをなおみにあげようと,いいのを選んでいる。
ボクらの訪問をホントに喜んでくれる。あんまり喜んでくれるので,すぐに「さいなら」と言うわけにはいかなくなり,インスタントコーヒーをいれてもらう。息子さんかお嫁さんかあるいはお孫さんの好みなのだろうか,コーヒーは薄めにいれて,コーヒーミルクをたっぷりいれてくれる。
おいしいな。
おばさんの定番おやつの農協バームクーヘンもおいしいな。おじさんの病状はますます悪く回復の可能性はない。医者に体の状態を直接聞いても意味がわからない。あんなに几帳面だったおじさんがボケてわからない。それでもなんとか理解しようと,医者ではなく,医者の話を聞いているおばさんの方をじっと見つめる。それをボクたちに話しながらおばさんが涙ぐむ。ボクらはその涙には気づかないふりをする。おばさんも精神的に辛い日々が続いている。
野沢菜の漬け込みが始まる…ボクたちの分も入ってる(笑)
水路からの防風柵。
「誰が作ったの?」
「あたしだよぉー!!」
「すごいじゃん!!おばさん,すごいよ。」
「あれ,おじーさん(おじさん)はちぃーともほめてくれなんだもの,うれしいよぉ。」
…と,手を引いて,家の裏の畑からの防風シートも見せてくれる。
おばさん,お元気で。がんばりすぎて体こわさないでね。
しらべ荘に戻って家を閉める準備をする。地下室に入ってみたが,もう生きているカマドウマはいない。駆除は来春が勝負だ。
今年はぷちぷちシートで蛇口のメカ部を巻いてみた。
工事中の風呂場も止水。
大工さんのアドバイスで風呂場は外の立ち上がりにもシートを巻いた。
色のほとんどなくなった庭が寂しげだ。来年,またオフクロを楽しませてやってくれよな。…と,土や空気や何だかそういうモノに声をかけてみた。オフクロはあきらかにそれらと会話している。だから,人のことばがわかるにちがいない。
近所の直売所に寄る。…と言っても寄るのはなおみだけで,ボクとタローは留守番である。
地物でもないこんな野菜をどっさり買ってくる。いや,東京に帰ってからでもかわらないよ。
「いや,ぜったい安いの!!」
ふーん,全部でいくらくらい?
「ご,50円くらい」
急速に天気が悪くなったので,予定していた紅葉狩りはやめて,諏訪のそば蔵でお昼を食べて帰ることにした。
ランチだと,漬物バーというのがあって,どれもうまい。