「今日は途中でシュウのワイシャツとズボンを買いに行くから早めに家を出ます。」
はーい。
「サ○ゼンじゃなくて,葛西橋通りのア○キね。]
はーい。
売り場に行くと,ボクは試着室の近くのソファーに陣取って待っている。これには多少の理由がある。ボクは船酔いがひどい。浮き桟橋で酔って吐いたことがある。それと紳士服売り場との関係は…大ありである。試着室の床がゆらりと揺れるのである。まだ粗相に至ったことはないが,こみ上げたことはある。それに今年は腰痛のこともあるので,ここでこうして待機し,必要なときにはさっと試着できるよう体調を整えるのである。
後方,熱心にボクのワイシャツを選ぶなおみと店員さん
「これ,はいてみて。」
はいはい。
「ウエスト測ってもらって」
はいはい。
「あと,ひとつ,きのう税理士さんが着てたみたいなシャツも欲しいのよね。もうちょっと待って。」
はい。
あとは1,2週間すると,朝,出される「今日着ていく服」の中に,今ここで買ったシャツやズボンが混じっていくようなのだが,ボクはたいてい気づかない。
世の男性がみんなこうなのか,それとも違うのか知らないが,ウチはずっとこんな風だ。
「もう,行っていいよ。」
はーい。
行くと言っても,なおみが会計するのを待たずに先にタローを待たせている車に戻るだけである。
昔は車に近づいただけで気配に気づき,「ボクを置いてどこに行ってたんだよ!!」的に尻尾をぶんぶん振りながらむしゃぶりついてきたものだが…
今は「あ,帰って来たの?お土産は?ない?あ,そう」という感じのタローである。