うう,腰が凝った。
夕方,使おうとしたマッサージ器に,わが物顔に座っているこいつら…
な,なんだ。これ。タローのか?
「ぶぶー。なお専です。すみっこぐらし,かわいいでしょ?」
病院帰りに笹塚で買い物をしたとき,ちょうどショッピングモールの催し物会場がぬいぐるみフェアだったらしい。
すみっこぐらしに吸い寄せられたなおみを販売員が目ざとく見つけて寄ってきた。
「お姉さん,800円にしとくよ。どう。」
未使用だがゲームセンターのマシーンに一定期間入っていた新古品なのでそんな値段で売れるようだ。
なおみは長考に入った。駆け引きしようとしたわけではない。
隣のぷーさんも欲しくなってどちらか迷っていたのだ。
思わずぷーさんを手に取ると,
「よし,負けた。二つで1000円」
「え?」
商談成立となったが,あいにくお札が一万円しかなく,釣り札が不足していたらしい。
「んー,ちょっと待ってて。事務所に行ってお釣り取って来るから。」
「あ。あたしくずしてきます。」
急いで戻ると,もう,ぬいぐるみは包装されていた。
「ぷーさん,もうひとつサービスしといたから」
全くその気がないのに,大坂のおばちゃん並みの値切りに成功したというわけ。
それにしても,もともと980円の値札がついてるぬいぐるみたち。
いったい原価はいくらなのだろう。
ほら,そこどけ。ベッドに移動しようとして,すみっこぐらしを落としてしまった。
丸いのでころころ転がり,タローの前で止まった。
タローはふんふんしてから,そっぽを向いた。どうやらお気に召さないようだ。