OUR DAYS2016年2016/11/21

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腰痛の病院探しで懲りてる。探し当てた専門医は信濃町の駅前雑居ビルの中だった。

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受付はなおみが電話で問い合わせた女性でとても容態を心配してくれた。

「ピンポーン。お待たせしました。10番のカードでお待ちの方,どうぞ中へ…」

電子音声が三畳間ほどの待合室に響くが,仕切りの窓に女性がいるので意味をなしていない。

「〇〇さん,どうぞ。」

ほとんど目の前のお年寄りに声を掛けた。

「あいや!ワシは時間がある。こちらの方を先にして頂きたい。」

当然だがあまりに狭いので,〇〇さんは受付でのやり取りを一部始終聞いている。

この病院は当たりだと心で思いながらボクは固辞する。

いえ,発作が来ないときは全く痛みがないのです。お気遣いありがとうございます。どうぞお先に。

〇〇さんの診察は2分もかからなかった。受付の女性が,処方箋を渡そうとすると,

「いや,今日はちょっと,それを預かっといてくれ。これからこれに誘われてるもんで」

と言いながら,左手でエアの杯をぐいっとやる。

「早すぎるよねえ,ここから青山まで,歩いて行ったって昼には早すぎるだろ?な?」

念を押されるまでもなく,これは明らかにボクに対する質問である。なんとなれば,受付のおばさ…もとい女性も,もう一人ソファで何かを待っている女性(半分寝ながらずっとにこにこしているご老人)も,その質問に応えられるとはとうてい考えられないからだ。

早すぎると思います。ゆっくり歩かれても20分ほどかと…。

とボクは答えた。

「イマムラさん,どうぞ診察室へ」

「ピンポーン。お待たせしました。11番のカードで…」

はいはい(;^_^A

こちらの方,お楽しみになってください。…ボクは〇〇さんにエア手酌しながら会釈して診察室に入った。

当たりの専門医は笑顔も人格も当たりだった。ボクがプライベートで知る唯一のお医者と雰囲気が似ていた。ウデも当然当たりだった。エコーを使って30秒足らずで,痛みの原因になっている石をつきとめた。直径4.9ミリ。

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救急搬送されたときの石とはやはり別の石らしい。一つ目の石が暴れて腫れてしまっている部分もクリアに見せてくれた。そして,4.9ミリの他にも2つの石を発見した。初老の看護婦さんの手際もやたらといい。尿検査のコップを渡されて,居酒屋と共同のトイレに行った。戻ってコップを手渡すと,2,3分後には分析結果が診察室のボクと医者にもたらされた。石を溶かす強力な薬を一種類加えて処方され,座薬はボクのリクエストに応えて倍の10個を出してくれた。

エコーに写っていた石が消えるまで,まだ何度も痛みが予想されるが,もはや専門医の診断下である。メンタル面のストレスは格段に違う。山手線でうまく席を得,座って新宿まで行けた。腰の痺れが出なかったので,思い切って小田急デパートに回り道してトップスのモンブランを買った。前日,ボクのバースディケーキを買いに行って,迷いに迷った末に選んだグラマシーニューヨークのモンブランが期待外れの味だったため,ずっと「トップスにすればよかった」と後悔していたからだ。

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帰ってなおみに手渡せば,

「いつ痛みが出るかわからないのに,無茶をしないでよ!」

と叱られるに違いない。だがいいのだ。まだ,あと何回,真夜中に迷惑な発作で,起こしてしまうかわからないのだから,せめてもの気持ちである。


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