足をひきずる愛犬を母に預けても,風邪が悪化しても,出かなければならない理由のひとつは,これがボクたちの結婚28周年記念の宴だからだ。
記念日はいつだったかと言うと,去年の1月30日である。
…そう,間もなく29周年がやってくる。話せば長いことながら,昨年
「1月はあまりに忙しいので,記念日のお祝いは今年から二人が初めて出会った5月23日前後に移動しよう」
との提案がボクからなされ,全会一致で承認されたことに端を発する。これまで超貧乏時代もニューヨーク留学の年も欠かさずお祝いを続けてきた。だが年を取るに従って,仕事の忙しさがピークに達するこの時期,体調もぎりぎりの日々が続くようになってきた。何もそんなときにしなくてもよいのではないかとなるのは自然の流れだ。
ところが昨年,ちょうど5月後半にはイギリスからお客さんがあって順延していたところが,肺炎,網膜剥離,脊椎管狭窄症,尿管結石と病気のオンパレードに遭い,計画するたびに週末の体調不良でキャンセルが続き,とうとう再びこの時期に突入してしまった。
もはや今夜を外すと,28周年は欠番となる(笑)
もうひとつ。
チャラTである。我が愛弟子が,近く安定した一流企業の職を辞し,ベンチャー企業に身を投じる。その先には独立を視野にしているだろう。
果たして今夜会いたいと連絡があったのは,それを正式に決めたことの報告だった。
それはいい。彼には才能がある。
それはいいが,ボクにはチャラTの彼女であるところのSちゃんにどうしても伝えなければならないことがあった。
当然のことだがSちゃんはチャラTの転職に不安を感じているし,家族や回りからのプレッシャーも強いことだろう。
Sちゃん,聞いてくれ。チャラTについていってくれとは言わない。
だが,人生は一度しかない。
ボクの20数年来の教え子の中でこんな子は他にはいない。
ボクは断言するがこの男と一緒なら貴女の人生はゼッタイに楽しい。
貴女の目にはボクたち夫婦が幸せそうに見えるだろうか。
決して経済的に豊かではないボクたちが幸せに見えるなら,貴女もこの男と一緒にいた方がいい。
公園通りは「青の洞窟」が最終日だった。
追記:この後すぐにちゃらTとSちゃんは別れた。