昔はホントにこの二人とよく遊んだ。去年,久しぶりで連絡を取り合い「今度会いましょう」と約束したきり,ボクが肺炎→網膜剥離→尿管結石となり,とうとう1年待たせてしまった。
タローは初めて会うのにすっかり彼らになついてはしゃいでいる。
タオルぶんぶん。
この日,連休の中日で伊豆半島は信じられないほどのマイカーで埋まっていて,地元の人と一緒でなければ身動きできない状態だった。
だけどボクたちは海の城跡を散歩し,森の貯水池でお弁当を食べ,駿河湾を一望する丘の上でコーヒーを飲みながら夕日を見た。
新しく建てた家も訪ねた。
タローはウサギと遊びたくて珍しく
「うおおおん」
とほえた。
早く帰るつもりだったが結局,いっしょに夕飯を食べた。
二人はボクたちと遊んでいるだけで昔と同じようにとてもとても楽しそうだった。彼らはお父さんの跡を継いで機械の工場を経営している。それが心身ともにどれほどタイヘンな仕事なのかボクは知っていたはずだ。
どんな事情があろうと彼らと15年も連絡を取らなかったことをボクは悔いる。だからたとえ忙しくても,近いうちに今度は彼の夜釣りにつき合うのだ。釣りは全くできなくてもつき合うのだ。