OUR DAYS2017年2017/5/13

月曜の朝,いつもは集団でしか現れない主治医が一人あたふたとやって来て

「今日は総回診なのでよろしくお願いします。」

と声をかける。よほど慌ててるのか,団の紅一点の女医も別に来て同じことを言ってすぐ去る。何をよろしくなのかと思えばなるほど。しばらくして廊下に緊張感がみなぎり,看護師も介護師も持ち場で直立不動。学部長の総回診である。術後2日で痛みは辛かったが,ボクも電動で体を起こした。まさに山崎豊子の世界!!やあやあと全ての患者に気さくに声をかけ,ボクの部屋にもやって来た。

「お,どうかな。痛くない?傷見せて。はい。ムリしちゃダメね。」

30秒とは言え,何故ボクだけ診察もあるのかと言うと,どうしたことかこの学部長がボクの主治医なのである。入院患者の中には他に何人もいない。隣のベッドにも陽気に声をかけながら賑々しく退場していく。長い列がうねりながら続く。緊張の面持ちで列を率いるのは,入院中,学部長に代わってボクを診てくれるラガー医師団長だ。

この学部長が平素は全く唐突に病室に現れる。回りの患者の主治医も急に診察に来るが,学部長の突然感は格別である。PCに向かっている10cm脇にスッと出現し,

「お仕事中?ごめんなー。ちょっと傷見せてくれる?んー,オッケー。今日,レントゲンあるから」

今朝早くに撮りましたけど…

「え?あ,そう。ちょっと待ってて。もらってくるから」

思わず,患者であることを忘れて,あ,ボクが行ってきますと言いたくなるが,そのときにはもう廊下をパタパタと歩いている。間なしに写真を手にして戻り,一枚一枚説明してくれる。

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手術は素人目にも完全に成功している。

「じゃ,もう少し。頑張って。ムリしちゃダメだよ。」

そう言いながら閉じたPCを開けてボクに向けてくれた。この先生に巡りあった幸運を心から感謝している。

 先日,他の担当患者の診察を終えて部屋から出てきたところを待ち伏せて,一緒に写真を撮ってもらった。その場を通りかかった看護師にシャッターを頼んでくれたのも学部長である。

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