入浴解禁から三日目。
あれ?
湯に浸かりながら二人揃って耳を傾ける。
ちゃっちゃぁちゃっちゃか…。
「来た来た」
ちゃっちゃか…フローリングに爪が当たる音。タローがやって来た。
ちゃっちゃか…どすん。…脱衣所に座る音。
「タロー♪来たの~?」
なおみが浴室の戸を開けると,タローが顔を出す。
子犬のときはひとりになるのが寂しくて来たのだと思う。いつの間にかそうして脱衣所で待っていたご褒美にオヤツをもらって,それから寝るのが習慣になっていた。ところがここ最近は耳も遠くなって,ボクたちがお風呂に行った気配に気づかず寝ていることも多くなった。
今日はきっと何かの拍子に目が覚め「あれ?パパもママもいない。もしかしたら…」と思って風呂に来たのだろう。
なおみが愛しく思うのもムリない。
「タロー!今日はパパにチーズをもらいなさい。」
タロー,よかったなー。えらいぞー。
…レトバカである。