OUR DAYS2017年2017/9/8

タローが鋭い金属音やクラック音に過剰反応し始めたのは,もうかれこれ3年ほど前のことで耳や口や思い当たるところはみんな診てもらって手術もしたが効果はない。

とくにクッキーを自分で噛んだ音にビクリというよりガクンとなって時には腰が抜けて座り込んでしまう。

今日は腰が砕けて腹が床についても,ガクンガクンと発作が止まらず,グワッシャと横倒しになって痙攣を始めた。驚いて「タロー!!」と叫びながら体をさすると,ダーっとよだれを流しながら体が硬直し,目は大きく見開いて瞳孔も開いた。なおみが悲鳴を上げながら,電話を取って病院の電話番号を調べるうちに,ボクの膝にピュッピュッとおしっこをしながら上半身の力が抜け,後ろ脚は不自然にねじれた。

もう助からないと思ったが,とにかく「タロー!!」と呼びながら体をさすった。オオカミのように固く食いしばった口に手を入れてこじ開けた。クッキーが喉に詰まっていないか心配だったからだ。タローはそれがボクの手だとわかったのか口を開き手が喉に入るに任せた。それと同時に目に光が戻り足をばたつかせた。助かるのかもしれないと思ってなおもところかまわず体をさすると,おしっこを垂れ流しながら立ち上がり,数歩歩いてぼーっと立った。ゆがんでいた顔が次第に戻り,意識も回復してきた様子を見て,ほっとしたなおみが汚物の処理を始めた。ボクはジーンズを脱いで水洗いした。

意識が完全に戻ったタローは不安らしく,しきりにむふむふとボクとなおみのところに交互に来ては汚物まみれの顔を寄せる。そして混乱の中で落ちていたクッキーに気づきぱくりと食べた。なおみはオレンジエックスでタローの体と床を拭き上げ,それからタローを連れて公園に行った。ボクは夜陰にまぎれて車に飛び込んだ。なぜってジーンズの着替えがなかったからだ。そのまま運転し,帰宅してなおみがタローの半身を洗った。タローはさっきまでの騒ぎがウソのように,いつものシャンプー後とおなじように床に転がりまくり,クッキーをねだった。

今はなおみと散歩に出た。発作は内臓などの重大な疾患から来るものではなく,おそらく聴神経付近のトラブルから引き起こされた。一瞬だが呼吸も止まったようだったので後遺症がないか心配だ。

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