「出席者11人なんだって」
えー!?じゃ,聴衆は9人?
「そうみたい」
なおみの同窓会のことである。女性が多い音大の卒業生たち,それぞれ家庭の大黒柱たる年令なので半日の時間がなかなか取れないのも致し方なし。演奏を頼まれて短期間だが練習を積んでいたなおみのスプリングソナタ…,本番の聴衆は9人と相成った。少々不憫だが久しぶりにケイちゃんと合わせての演奏は楽しかろう。土砂降りなので笹塚まで送ると,バイオリンを抱えて楽しそうに出かけて行った。
かくして本日,先に出勤。なおみが戻ってくる夕方までは一人である。それはたいした問題ではないのだが,お昼の買い物とかタローのワントゥとかそういうことが今のボク,とくに低気圧気味の京などはけっこう大ごとだ。
「ねえ,同窓会の幹事さんって何も報酬ないよね。きっと。」
なおみとて卒業以来初めての同窓会,いつもハガキや電話をくれる二人の幹事さんのことが気になっていたらしい。先週,演奏用にちょっとはいいワンピースでも買ったらいいと勧めて原宿まで行った日,
「これ,幹事さんたちにこっそりあげようと思って買って来た。」
と小さな包みを二つ見せた。ワンピースと同じくらい時間をかけて選んだハンカチらしい。ボクの一人仕事にも力が入るというものである。