Apr.7th, 2019
16.経度00

明けて7日目。

イギリス最後の朝が来た。

「わー!今日も雨降ってきたー!!」
噂には聞いていたがさても雨の多い国。

ロンドンの東端でテムズ川が巾着型に大きく蛇行する,その南側の丘に旧グリニッジ天文台(現在は観測機器はなく観光用)がある。

世界地図のここが起点。

大航海時代の1675年設立。1851年,本館に子午環を設置され,やがて世界の経度の基準となった。
だが,子午線の引かれている中庭には入場料が10£。とくに由緒もない観光用の線を見物するのに3人で4500円を支払うというのは少々ボクの旅のポリシーに反する。

「中には行かない!」
「えー!?」
もとよりボクの強い希望で訪ねた場所で,ドレミたちはあまり興味がない。つまりボクのためにホントに見物しなくてよいのかと驚いている。

ボクは10£へ抗議をこめた対抗措置として地図やコンパスのアプリを駆使して経度0を探す。地球が完全な球体ではないため現在の本当の子午線は天文台より東に102.5mずれている。それを探しあてて記念にしようというわけだ。

実はここを含め,ロンドン市内を中心に有名な観光施設をはしごするような観光客にはロンドンチケットという共通券があって団体客はそれを利用している。そしてどの施設もロンドンチケットを利用しないボクらのような個人旅行者が行きたい場所だけに立ち寄るには少々無理がある料金設定になっている。

ウインザー城は21£,ロンドン動物園に至っては26£(3900円…参考までに上野動物園は600円)である。実はグリニッジ天文台に入らなかったのはその理不尽に対するボクなりのささやかな抵抗でもある。

機微に聡いドレミにもボクの気持ちが分かっている。むしろこうなるとドレミの方が熱中して数十センチにもこだわって楽しんでいる。
見晴らしの良い斜面に子午線上に目印の傘を置いた。

IERS基準子午線 本初子午線経度0度(無料)
東洋と西洋を跨ぐ。 後方102.5m西に「昔」の子午線が通っていた旧グリニッジ天文台が見えている(笑)


北上川に宮沢賢治がドーバー海峡の白い崖をイメージして名付けたイギリス海岸という土手があって,亡き愛犬のタローと訪れた思い出の地の一つだ。だからボクは最後に海辺まで走ってその海食崖を見たかった。

でも南東に向かう幹線道路が工事渋滞していたので途中であきらめて引き返し空港の近くで過ごすことにした。

ウインザー城
ここはエリザベス女王がお気に入りの別邸である。

桁外れの観光地で町を歩いている人の6割はアジアの大国からお越しの方々である。

駐車料金も格段に高い観光地値段。

ちょうど一週間前にヒースロー空港に着陸する飛行機の窓からこの城を撮った。

街並みはキレイに整備されテーマパークを歩いているようでいささか物足りない。
城の佇まいは圧巻だったが外観を眺めただけだ。ここに関しては入場料が高いからという理由ではなくフライトまでに時間の余裕がもうなかったのである。

ドレミを撮るふりをしてさりげなく衛兵をパチリ。…というのも団体ツアー客のあまりのマナーの悪さに,繰り返し注意や警告を余儀なくされるために衛兵も警備員もいささかピリピリしていらっしゃる様子だからだ。彼らの目には大声で騒ぐかの国の迷惑なツアー団体客とボクたち日本人との区別は難しい。


一週間あまりの旅…力の限りを尽くした。ボクたちにとって旅は休養ではなくいつも冒険だ。

まだ子犬だね。

しきりに上空を着陸機が通過する。

そろそろ飛行機の時間が近づいてきた。

「先に駐車場に行ってて!」

ドレミが走って角を曲がっていった。

行き先はここ。
イギリスの最後はこれで〆ようではないか。



バイバイ,アストラくん。ターボなのに小気味よく吹けて頼もしい相棒だったよ。ありがとう。忘れない。

送迎バス。

そしてターミナルに到着した。

最後の関門は搭乗手続き。

無事終了してホッとしている。

ポータブルWi-Fiで使っていたスマホの設定を3台分解除する。

フランクフルトと同じく,ここでも日本行の搭乗口は遠い遠い。

さらば英国。

夕焼けが美しい。明日のロンドンはきっと晴れだろう。

それほど長いと感じないうちに眼下に海ほたるが見えてきた。

このビデオ面白いね。海外から日本への観光客にも喜ばれているでしょう。
でも食事はやはりいけない。とうとう帰路はパン以外手をつけなかった。

安いチケットに合わせて日程を都合したので,急ぎ羽田から直接出勤しなければならない。

えっちらおっちらトランクをひきずって駅から職場に向かう歩道に…
ん?
88才オフクロ?…なぜ!

「和食に飢えてるかと思ってサプライズで持ってきた。」
…と母。
一人で?弁当担いで?地下鉄で!
いいから!マジそういうサプライズいらないから!!

ああオイシイ。オフクロの煮物。
英吉利紀行
完