「どうだい,ワンちゃんロスからは少し立ち直ったか?」
レントゲン写真を見ながら学部長(病院長に昇格している)は言った。椅子を回してこちらを向いた。
「奥さんは?大丈夫?」
講習後半真っ最中だがN大病院の診察があった。先生はとても忙しいので診察日でゼイタクは言えない。この日もまずレントゲン室に行ってから診察室の前まで行くと診察を待つ患者がソファーにあふれていた。が,腰かけようとする腰がソファーにつく前にボクの番号が電光掲示板に表示された。ボクの仕事が忙しいときだと知っていて最大限に配慮してくれている。そして診察室に入った途端にペットロスを心配する声をかけてくれた。
タローを亡くしたことは以前,体重が急に減った理由を尋ねられて話した。彼はそれを克明にカルテに記入した。
「おかげさまで少しずつよくなっています。」
「新しいワンちゃんを飼うことはやっぱりムリかな。」
「はあ。ちょっと。」
腰の診察はベッドで足を曲げたりひっぱったりして反応をメモするだけ。
エアコンが悪いのかここのところ薬が欠かせなくて…「大丈夫」
かばっているせいか背中の筋肉がときどき腫れあがります…「大丈夫,大丈夫」
「骨融合順調。これは奥さんにプレゼントだ。」
そう言ってレントゲン写真をくれた。
この先生を信じるしかない。