午睡(6号F)油彩
一年が経った。ボクたちの時間は止まったまま何も変わらない。
そうなんだ…ただ時が経っただけでは変わらないんだといささか驚く。
タローはいないという事実の受け入れを心が拒絶している。遅ればせながらまずは現実を受け入れる努力を始めなければならないだろう。
なおみは今朝もまた花を買ってきて足した。そして1か月後のとき,3か月経ったときと全く変わらずに号泣する。
「進んでる。1か月分は経ってるよ。」
…しゃくりあげながらそう言う。
「12年経てば1年分くらいは癒えると思う。」
そんなにかかってはその間に体が参って死んでしまうよ。
あまり笑い事でもない。1年前とは別人のように二人の体は弱ってしまった。
「話をすると泣いてしまうので我慢してるの。」
それはいけない。話して泣くようにしよう。…これが今日の結論である。
大好きなチーズとパンとなおみが手作りのお菓子。小指の先ほどにちぎったチーズをボクの指をかまないようにトントンと探ってくる歯の先の感触が指によみがえる。