よりによってサッカーアジアカップ初戦の夜である。仕事帰りの車の中でなおみの携帯が鳴る。
「シッポナちゃーん♪シュウちゃんいる？もう完全にアウト」
矢切の師匠からである。アウトなのは例によってPCの不調である。
「もう10分くらいで帰宅するので電話させます。」
…そう。サッカー代表戦のある夜はスマホ，タブレット，ラジオ，車載テレビ…試合結果を見ないように一切の情報端末を遮断して家路を急ぎ，とっておきのピールを飲みながら録画してある試合を見るのがボクの唯一の楽しみなのである。テレビをつける前に師匠に電話する。
どうされましたか？
「それがさぁ，シュウちゃん。オレは何にもしていないんだよ。ブログの更新をしている途中でちょっとお茶を飲みにダイニングに行って戻ったらもうつながらなかったんだよ。」
Wi-Fiに接続しないという。PCの再起動はもちろん，PCとWi-Fi親機の電源や子機の抜き差しも何度か試みたという。
…あんまりむやみに抜き差ししない方がいいんですけど…(;^_^A
症状を聞いても埒が明かない。
わかりました。明日の夜に伺います。それまでご不自由かけますけどブログはスマホでお願いします。
録画のキックオフが30分は遅れた。
現在，ボクは自分と職場のPCの他に妻と母と義母，そして矢切の師匠のPCをメンテナンスしている。ボクのような全くの素人SEのボランティアメンテナンスによって辛うじてネット社会というのは成り立っているということをマイクロソフトもアップルも肝に銘じてもらいたい。
翌深夜，仕事のあとになおみを地下鉄で帰し，車で矢切に向かった。家とは真逆の方角である。PCを立ち上げてみたが確かにインターネットに接続しない。タブレットを取り出してWi-Fi接続を試してみたが電波そのものが飛んでいない。居間に行ってみると，本人が何度か抜き差ししたと主張しているルータの電源が入っていなかった。光の受信機の横に逆さまに立てかけられている。おそらく奥さまが掃除のときに倒し，誤って逆さまに置いたのであろう。コードがステーに当たりそれが原因でルーターの電源が切れたと思われる。ルーターを正立させてコードを差すとタブレットもスマホもPCもWi-Fiを受信した。
なおみを電車で帰すので，以前はいつもタローを乗せて師匠のPCを直しに行った。去年9月に行ったときは，途中でタローの名前を何度も絶叫し，帰宅してから体調を崩した。1か月ほど胃炎に苦しみ，体重が4kg落ちて不整脈が再発し，循環器科を受診したところで，このままでは冗談ではなく死んでしまうと思ってなんとかメンタル面を戻した。
その後も一度か二度行ったので，今はそれほどのことはない。…が実はタローは矢切の近く，市川の生まれである。京葉道路の市川インターに向かう道には思い出があちこちに散らばっている。初めて家に連れて帰った日も，助手席のなおみの膝の上にタローを乗せてこの道を走った。だから今でも胸がきゅんきゅんとする。
帰宅したのは1時半を回っていたが，なおみは起きて待っていた。いつも変わらない。ただなおみに飛びついて行くタローがいない他には…。