タローの命日に供えたチーズやパンを見て,唾をのみ込んでいるのに食べることはしませんでした。それ以来,出勤時間近くなるとぴったりとボクの傍を離れなくなります。タローと並んでチーズをもらったことを覚えていたのです。できるだけ,そっけないそぶりでマロンにチーズをやります。なおみが向こうの部屋でひっそり泣いているのがわかるからです。
先日の休みに鍋のときは「肉ちょうだい」しながら,ふと
「タローは来ないのかしら」
…あきらかにそういう風情で部屋を覗き込みましたから,またなおみがさめざめと泣きました。