痛みのために気絶したことありますか?
ボクは二回あります。一回は去年の春,タローショックの神経性胃腸炎のためにお腹がねじれるように痛んで意識を失い,そのまま救急搬送されました。二回目は昨日のことです。
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月曜にジムに行ったときから腰に違和感があった。しかも患部の右腰ではなく左側だった。ぎっくり腰は骨盤や背骨ではなく筋肉の炎症である。重いものを持って「あ痛!」というのはまだまだたいしたことはない。このように徐々に引き攣って行くのが怖い。果たして翌朝には歩行が難しくなり,椅子に座って机のものを取ろうとした刹那,ビキッっと電撃が走った。あまりの痛みに気を失った。体が崩れ落ちる前に自分で床に転がったので大惨事にはならなかった。
未曽有未体験の痛みだった。
網膜剥離の手術でシリコンを眼球の裏側に縫い付けた無数の糸の刺激,尿管結石の悶絶する激痛発作の波,そして脊柱管狭窄症手術後の心が萎えるほどの痛み…およそここ3年でボクが経験したのはウルトラ特急の痛みばかりである。言わば痛みのプロフェッショナルたるボクがなお気絶する激痛だった。ありったけの鎮痛剤を使った。
これはもしかしたら手術のボルトが外れたのかもしれない。痛みと不安で夜も眠れない。明けて午前中に峰岸クリニックに行った。
「久しぶり。キミの手術したアイツはまだ医者をやってるよ。」
は,毎月受診しています。」
「そうか。はははは。」
大学病院の教授で学部長,院長の大先生をアイツと呼ばわりするのはこの老師だけだろう。
最近はグーグルマップの評価でなんと4.8をマークしている。前の患者は若いヨガのインストラクターだった。大声のミネギシ老の診察は待合室まで筒抜けで聞くとはなしに聞こえてくる。ネットで見つけて遠いところから来たらしい。
ボクは事情を話してとりあえずレントゲンを撮ってもらった。
「大丈夫。ただのぎっくりだ。手術とは関係ねえ!」
レントゲン写真の現像時間まで含めて結論まで10分と経っていない。ヨボヨボしていてどこにこんな力があるのかというほどの力で手の甲や耳たぶのツボをひねりつぶす。
「あたたたたたたた」
「うるさい!」
針を打って電気を通す。
「つぅー!!」
そしてブロック注射
ズドン
「あひぃー!!」
「さっき帰った患者もうるさかったけど,あんたの方がずっと大袈裟だな。」
電気マッサージ…これはアシスタントのおばさんなのできつくない。
定番のコースを終えると痛みが半減して立てるようになった。
待合室まで送りに出た老師は検査待ちしている美人ヨガインストラクターを意識してかどうか。
「しゃんと歩けるようになったろう。どうだオレの実力は!がははははは!」
と笑った。
「あれだけしていただいたらどれか効いたみたいです。」
「かー!!下手な鉄砲もってか!失礼なことをいいやがる!お母さんによろしくな。」