夏以降,89才母の体調がすこぶる良い。
春にはあんなにぐずぐずとしていたのが嘘のようだ。
荒れ放題だった庭を猛然とやり出した。
せめて形ばかりは手伝おうと思っていたが,日曜出勤やら台風やらで延び延びになっていた。
9月も尽きようという週末にようやく来てみればもう庭はこの有り様。
母一人で手入れしたとはとうてい思えない華やかさである。
今日,明日はずっとお手伝いいたします…と気合の入るなおみ。
えんえんと地味な草取りを続けた。
「シュウはこっち」
と母。
なんと半分枯れたハマナスを母が自分でノコギリを使って伐り倒してあった。
あとにシュウメイギクを植えたいので根っこを取ってほしいと言う。
それがボクのスペシャルミッションである。
冬には凍る地面をつかんでいた低木の根の強さ…。
大自然との闘いが始まった。
数分に一度はへばって日陰であえぐ。
汗がほとばしる。
体力のなさだけの問題ではない。要領が悪い。
力に任せて掘り起こそうとするものだから無駄が多い。
消耗も激しい。
1時間くらいかけて4株を掘り上げたところで、
鍬の柄が縦にさけるようにポッキリと折れた。
開墾を終えたのはせいぜい2平方メートルほどである。
彼岸も過ぎたというのに残暑が戻ったように陽ざしが強い。
昼過ぎの作業はあきらめて鍬を買いに村のホームセンターに下りた。
村の田んぼは金色に実り,苅田とのコントラストが美しい。
しらべ荘に戻って日が傾くと急速に涼しくなった。
なおみは30分バイオリンを練習してから再び草を刈り始めた。
ネコを押す傍らをタローがついて歩く幻影を見る。
手伝っているつもりの誇らしげなあの表情である。
母がマロンを散歩に連れ出した。
散歩と行っても敷地の中をこうして歩くだけだ。
それでもずいぶんと元気になった。
春には一時歩けなくなってもうダメかとみんな覚悟したものだ。
三時半から北側の垣根の剪定に入った。
ほとんどジャングル状態になっていた。
ウワミズザクラの幹は垣根の小さな木戸を咥え込んでいた。
足腰の達者ななおみは落ちた枝の運搬係をひとりで担っている。
もう薄暗くなってきた。最後のスパートに入る前に小休止と水分補給。
二人とも肩で息をしてあえいでいたがなおみがカメラを向けると会心の笑顔。
似たものなんとやら。
空ばかりが明るく,もう落とした枝が見えなくなるまで手入れを続けた。
これは翌朝撮ったようす。
母はもう6時半から庭に出ていた。
朝食後にはなおみも草刈に入る。
そしてシュウは…
マロンも…
爆睡。
今日の仕事はカマ研ぎ。
もちろんやったことがない。
父の使っていた砥石が残っている。
指でさわるとどれが中砥で仕上げ砥か区別がついた。
カマの研ぎ方の動画を検索したが,右利き用のカマを右利きの人が研いでいる。
左利き用のカマを左利きの人が研いでいるものもヒットしたが,
右利き用を左利きの人が研いでいる動画はない。
自分で工夫した。
なおみも母もよく切れるようになったと絶賛するものだから調子に乗って包丁も研いだ。
「あーあ,明日からまたおひとりさまかー」
と母が聞こえよがしに言うものだからそうそう早く帰るわけにもいかない。
農協のスーパーでマグロの切り身に2割引きのシールが貼ってあった。
マグロとアボカドの天才ちらし寿司。
冷蔵庫にあった頂き物の杏ジャムをソースに使って天才チキン。
8時前に原村を出て10時過ぎに帰宅した。
徐々に筋肉痛が激しくなってきた。