「あたし,先週のは客寄せ人気取りで,本当にチェコフィルが披露したいのは今週の演目だと思うのよ。」
もちろん負け惜しみである。
予約したときはその「先週」樫本大進を迎えての「悲愴」とか「チャイコン」とかを買ったつもりだったのである。
今月に入って一週間間違えたチケットを買っていたことが判明して落ち込んでいた。
「やっぱりあたしシュウより先にボケる。どうしよう。」
サントリーホールに着くと当日券を求める長い列ができていた。
当日券が残っているところがカシモトくんなしの日本におけるチェコフィルの現状である。
それでも1万6千円の席。急遽入った昨日の原村行を日帰りしたのも仕方ないところ。
ところがどっこいどっこいしょ。
なおみの負け惜しみが本当になった。
「わが祖国」全編は感動的で大人数のチェコフィルはため息が出るほど上手だった。
割れんばかりの万雷の拍手とスタンディングオベーション。
指揮者はアクティブな指揮で6曲を休憩なしで振り切った。
アンコールがなかったのもうなずける。
セロ弾きとしては10台ものチェロが見るだに圧巻だった。
コンサートのはねた帰り道,ボクは絵を描きたくなった。
聞かなくてもわかる。なおみは明日からバイオリンの練習にますます身が入るだろう。