先週から腰の具合がよくない。
なおみがボクの腰を心配して駅まで自転車を使えと言う。
駅前に自転車を置いておくわけにはいかないので後ろからなおみが走ってついてくる。
駅で別れた。年に数度の別行動日である。
いやはやたった二駅だが久しぶりに通勤ラッシュを味わった。
これに毎朝耐えている東京のサラリーマンは世界一尊敬に値する。
新宿駅8時30分集合。
今日は中古自動車屋さんのSさんと恒例の飲み会である。
ロマンスカーの定番たいめいけんのカツサンド。
…だが,缶ビールは自重してコーヒーを頼む。
箱根湯本のホテルが経営している立ち寄り湯。
いきなり1時間半も露天風呂でおしゃべりする。
いつもだいたい9対1の割合でSさんの話を拝聴する(笑)
車の話,高齢化した元職場の先輩たちの笑えない笑い話,互いの病院通いの報告…
続いてお食事処に移動。
朝出かける前は土砂降りだったのに窓外が晴れてきた。
向かいの山をターンパイクが横切っている。
「あそこの料金所を通過した直後には160km/hまで一気に加速したもんです。」
とSさん。もちろん早朝の話だ。
ボクにはせいぜい120km/hが限界。彼のテクニックも度胸もFDセブンも圧倒的だった。
初めてお会いしたのはともに20代のとき。バイト先の友だちの紹介だった。
ボクは予算50万円のスターレットを買いに彼が店長を務めるマツダの中古屋に行ったのだ。
Sさんはその頃,系列店で販売台数1位を毎年連続で獲得しているイケイケ店長だった。
店の前に置いたアウトドアチェアに座って
「イマムラさん,これ買わない?」
と背後の黒い2TGセリカを指さした。ビール腹が大きすぎて体が後ろに回っていなかった。
68万円だった。差額の18万円は両親に泣きついたのかどうか覚えていない。
以来,40年。彼以外から車を買ったことがない。
その代わりやたらとスポーティカーを乗り換えてきた。
「そこまで腹は出ていなかった。イマムラさん,作ってるよ。」
互いの思い出も細部があやふやになっているのは年月もあるがこの日の酒量にもよる。
すでに3時間,昼からひたすら飲み続けている。
「シモジモの通勤ラッシュを背に箱根で飲んだくれる。」
数時間のお大尽である。
いったん風呂に行ってからまた飲みに戻ろうということになり,休憩室の床に転がったまま気絶するように寝た。
目がさめたら6時を回っていた。それから風呂でまたおしゃべりをした。
フロントに下りて聞くと,
「もう送迎バスは終わりました。」
と言われた。ロマンスカーの最終も出たと言う。
二人で大笑いした。
タクシーで箱根湯本まで行ってローカル線と急行を乗り継いで帰った。
この日,なおみはひとりで銀座にいつもの倹しいショッピングを楽しんでいた。
代々木上原まで迎えに来てもらった。
久々に別の時間を過ごしたのでお互いの一日を報告しあって話が弾んだ。