ドームの試合も遊園地もやっていない。
休日なのにひっそりと人出のない後楽園にそびえ建つ東京ドームホテル。
その高層階で甥っ子の結婚式があった。新婦の親族,友人は神戸と大阪の方々…
前日夕方,両都市の市長がそれぞれ市民に対して三連休の市外への移動自粛を要請した。
新婦側関係者が東京入りしたのはその直前である。
北海道を除けばCOVID-19感染者が突出している三都市の揃い踏みということになった。
この時期の挙式参加には勇気が要るが,誰もが若い二人を応援したい気持ちでいっぱいなのである。
もちろん会場となるホテルの感染防止対策は徹底されていて感染のリスクはかなり低いと思われた。
親族紹介,挙式,フラワーシャワーと式典は滞りなく進み披露宴となる。
そんな中,ボクの心はコロナにない。
…ボクの席にだけ置かれた水のコップ。それを口に含むたび,何度も胸ポケットの紙を確かめる。
乾杯の音頭とスピーチの原稿が暗がりに裸眼でも読めるよう巨大なフォントで印刷してある。
新郎新婦が入場して来た。
大企業の社内結婚であるため,あえて職場関係の出席はなくしたそうだ。
つまり来賓がいない。仲人もいない。実質スピーチに立つのはただひとり…
「ご祝辞と乾杯のご発声を賜りますのは新郎の伯父さまでいらっしゃる…」
ひょえー(;^_^A
…
席で見守るなおみも母も…我がことのように緊張していたと思われる。
ボクの雄姿は誰のカメラの中にも記録されていなかった。