OUR DAYS 2021年2021/06/13

「シュウさん,光ってる。」

三島に住む親友Cさんから昨夜連絡が入った。3週間前から機材も衣装も準備して待っていた。

彼が夜釣りする駿河湾の奥には夏の夜に夜光虫が発生する。

「波打ち際はヤンキーのミニバンの下みたいに…」

真っ青に光っているという。一度見たいと思っていた。去年は出かける直前にぎっくり腰で断念した。

今年もここまで出かけられる日と夜光虫の発生するタイミングが合わずにいた。

親友の彼が毎夜狙っているのはアオリイカである。

エギングという伝統釣法を守る正統派であるがゆえ年に数ハイしか上がらない。

極寒のときも蒸し暑い夏も二日に開けず竿を出している。

波打ち際からときどき届くメールはドキドキするほど臨場感がある。

ヤンキーのミニバンの下のように青く光る海を見たくなるのは人情である。

だが今日は朝から補習でさすがに昨夜出かけることはできなかった。

仕事を17時で切り上げて高速に乗った。勝負をかける。

気温が下がらなかったので今夜もプランクトンの発生する確率は高い。

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朝からぶっ通しの仕事を終えてそのまま出たので夕飯のことを考えていなかった。

何か買おうと石川のパーキングに寄るとイートインコーナーに一人も客がいない。

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 とんと外食をしていない。ただのラーメンと豚汁定食が染みわたった。

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 東名を海老名より先に行くのはいつ以来だろう。

新東名経由で三島に着き,Cさん夫婦の家から車を出してもらった。

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 光った。波も岩も幻想的に光る。

だが写真に撮るためには石を投げたり,棒を入れたりして刺激しないと光らない。

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 なおみが歓声をあげた。Cさんがほっとしてしゃがみ込んだ。

もしも今夜出なかったらどうしようかと考えすぎて生真面目な彼はお腹をこわしていた。

さて,かつて写真を趣味にしていたボクとしてはこちらがずっと思い描いていた今夜の想定図。

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月はなく満ち潮で浜がない(;^_^A

釣り場の崖を下りるしかない。

停めた車の中で着替えるのは「なぎさのハイカラ人魚」

だが,ボクの専属モデルは水着ならぬステージ衣装にハイヒールのサンダルに着替える。

黙々と従っているところがえらい(笑)

さらにストロボ用の三脚を担がされ,岩をつかみながら崖下に下りて行く。

Cさん夫妻は交換レンズや機材,そして最高級の竿を持って続く。

最後にカメラマン・シュウが傲然と崖の斜面に三脚を立てる。

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夜光虫 ISO3200 F/5.6 ss30.0(クリックすると拡大します。)

camera: 5D mark III lens: EF24mm f/1.4L transmitter: ST-E2 strobo: 580EXII

 一見,幻想的に見えるが現場はタイヘンなことになっていた。

これはストロボが強すぎて失敗したショットだがおかげでちょうど撮影の様子が写っている。

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まず,スレーブ用の三脚を立てるスペースがないのでストロボは手持ちである。

シャッターが下りて露光が始まった瞬間にストロボが光ってなおみは写し取られる。

そして暗闇の中で猛然と動き回りながらCさんが海面を竿でかきまわす。

その中でモデルは30秒間フリーズしていなければならない。

動くと後ろの光が体を透けて写ってしまうからだ。

これを何セットも行ったうちの1枚が上の写真である。

想定外に沖のイカ釣り漁船の灯りが明るかったのでトリミングしてある。

モデルとアシスタントはもちろんふらふらになった。

ちなみにカメラマン・シュウはカウントダウンしてレリーズのボタンを押していただけである。

雨がぱらつき虫の光も弱まってきて撤収した。

新鮮な海産物をお土産にもらって深夜の道を帰路につく。

御殿場を過ぎたあたりで篠突く降りとなり,この日気象庁から関東地方の梅雨入りが発表された。

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