OUR DAYS 2021年2021/9/29

揮発性油が切れたので世界堂に寄った。マツダの隣りがホルベインの棚で無臭ペトロールに目が行った。これから冬になると閉め切った部屋で描くことになる。なおみのことを慮って1分ほど迷ったがいつものテレピンにした。揮発性油だから匂いがなくても換気はしなければならない。

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ボクは松の匂いが好きなのだ。なおみももう33年もヘッポコ絵描きと暮らしていればテレピンの匂いには慣れているだろう。

ふと思い出したがウインザーアンドニュートンのテレピンを試したことがある。何とも言えない匂いに閉口して二、三度使って捨ててしまった。してみるとイギリスの松はあんな匂いがするのだろうか。この前、従妹を訪ねて行ったときに確かめておけばよかった。贔屓にしているマツダのテレピンは芳しい松の香りがする。

クロマツは防砂林として優れた性質を持っているために海浜に植林されることが多い。そもそも塩に強い松は一般的に砂浜で生き残りやすい。だから白砂青松は日本独特の景観ではない。城に松はどうやら日本だけの風習である。非常時(戦時)に食料や燃料,医薬品として利用するために植えられたとされるが,実際に食料にしたという記録はないらしい。

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この稿を書くうちにその名もパインバスという入浴剤が恋しくなってポチっと購入してしまった。初冬に道東を旅したとき,根室の駅前で老夫婦が経営するビジネス旅館に泊まった。

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まずは温まってと小さな風呂に案内されるとステンレスの浴槽にパインバスの湯が張ってあった。ボクたちはお湯が減らないよう交代で湯に浸かった。温まった。北海道の入浴剤だとばかり思っていたら大阪の老舗の製品だった。松葉の香りに凍てつく別海の野に舞う丹頂の姿が浮かんでくる。

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さてテレピンはテレビンとかターペタインとか呼ぶ人もいる。だが調べた限り、フランス語ではテレパン、ドイツ語も英語もテレピンだった。ターペタインなどはいったい何語が訛ったのだろう。ミシンやアイロンの類の外来語だろうか。

東京は蔓延防止を含めると4月以来実に半年ぶりに緊急事態宣言が明けた。この週末は台風一過の好天となり待ちに待った人たちが大勢出かけるだろう。ボクたちはまだ遠慮して家で過ごそうと思う。テレピンも補充したし途中まで描いている甲斐駒F6号を仕上げよう。

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なおみはきっとたくさん洗濯しながら溜まっているドラマや映画を見て過ごすだろう。秋もたけなわ、せめて夕飯に贅沢をして、日本の松から採れるキノコでも食したいところだがボクたちの経済力では少々香りの劣る外国産が相応である。

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