OUR DAYS 2022年2022/7/3

土曜日の深夜11時。東名高速で事故渋滞に遭い,ナビが大井松田を流出して箱根越えを指示した。正直,峠のバトルはきついなと怖気づいた。職場からそのまま三島に向かったので心身ともに疲れている。目の手術直後でもある。視力は安定せず,メガネも更新していない。眠気と戦いながら小田厚の終点から箱根新道に入る。実は七曲ではなく新道を行くのは初めてである。箱根をぶいぶいと走っていたのは90年代のこと,箱根新道が開通しても使ったことがなかった。それがいつのまにか無償化されている。なんていい道なんだ。はるか後方のヘッドライトが近づいてくる気配。仕方ない。まさかに峠でこの距離を追いつかれるという屈辱は耐えがたい。3速にシフトダウンした。横目にちらり,なおみのやれやれという表情が見える。

「左,おっきめのカーブ!その次右!急っぽいよ。」

目がよく見えないので助手席からのナビはラリーのそれに近い。見え隠れする後続のヘッドライトとはほぼ同じ距離を保っている。前方に健気に飛ばす軽自動車が近づく。その先にトラックが作る列が見えて,ラリー状態はあっけなく終了した。東名の交通情報を聞いて峠越えを選んでいるドライバーが意外に多かった。箱根峠からトラックに続く列の中を下った。箱根越えを選んだ車たちである。ペースはけっこう速い。そして山中城付近の道もまた驚くほど広くてキレイな道になっている。三島までならもしかして事故渋滞がなくても1号の方が新東名より早いかもしれない。三島の親友宅到着は25時近くになってしまったが歓迎された。

翌日曜日は曇りでずっと続いていた猛暑日も一段落した。

今年の賀状で旧年中に趣味の大きな買い物を3つしたと書いた。1つ目はバンドのオリジナル曲の作曲依頼。いい曲を作ってもらって今は二度目の動画制作に向けて練習中である。2つ目は絵描きとして絵本の出版で、こちらは編集部とのやり取りが長引いて、7月刊行の予定が、今もストーリーの検討中である。そして3つ目がこれ。

NBロードスター。

去年の秋に来たとき譲りたいと言われた。ご覧の通り全く実用には役立たない。帰ってからなおみに相談するとそれを承知で二つ返事の上に背中を押された。妻を娶らば才長けてである。

今回はその試乗のための伊豆旅である。買い物と書いたが持参した精一杯の代金は受け取ってもらえなかった。彼はこの他にNA,DC2インテR,S2000を所有している。NBに値段がつけられないのはわかる気がする。

…というわけで,ボクたちはこのNBを「買う」のではなく「もらう」ことになりそうである。だが今後の維持にはかなりの出費が見込まれる。高い買い物であることに違いはない。さっそくであるが,ボクたちの来訪に合わせて,バッテリーを積んでエンジンをかけたところ電気系統が故障した。試乗するつもりが修理工場のピットでの対面となった。NBは完全にアナログかと思っていたが,燃料噴射はECUというコンピュータで制御されているとのこと。

「もしかしたらECUの寿命が近いかもしれないっす。」

(;^_^Aもちろん覚悟はできている。

続いて韮山眞珠院。鎌倉殿の13人前半のヒロインだった八重姫ゆかりの寺である。

参道にある八重姫御堂。

その中にボクの殿絵,鎌倉絵が展示されている。裏山の反対側は北条の里,隣りには北条時政ゆかりの願成就院がある。西伊豆にお出での際は,ぜひぜひ眞珠院に立ち寄られたし。この日も新作三枚を奉納して来たので,新たに展示に加わると思われる。

ボクはそれを見物に来たわけではない。本堂に飾っていただいている門脇の桜を描いた油絵にワニスをかけに来るのが本当の用。秋に撮った写真から満開の桜を想像して描いたものをとても気に入っていただいたので,桜の季節に間に合うよう完成と同時に冬にお送りした。乾燥していないのでワニスをかけられなかったのだ。

苑内には夫人が丹精したカサブランカがたくさん咲いている。

眞珠院との関係について,詳しくは旅行記をどうぞ→鎌倉創世探訪記「04/眞珠院」

さて,用はこれでおしまい。午後は何をして過ごそうか。

「淡島か三津の水族館に行ってレストランで洋食はどうだろう。」

ボクは眞珠院の参道でそう打診してみた。

「シュウさん…オレ…」

親友が難色を示すことは分かっていた。彼は病的な潔癖症と几帳面である。なおみもそうだが彼はその10倍である。コロナ禍が来てここ2年半,彼はホントにどこにもでかけていない。行ったのは,

「しらべ荘に2回行っただけっす。」

レストランや町にもでかけていない。唯一行ったのが,

「富士見の食堂っす。」

…しらべ荘の近くの蕎麦屋に一緒に行った。

友だちだからという理由ではない。他の友だちとはでかけていない。ただ,ひとえにボクたちの感染対策を評価していたのだ。2年前の当時,ボクたちの感染対策は徹底していた。公共交通機関は一切使わない。繁華街には近づかない。買い物は店の入り口まで車で送り,買い物もなおみの手も車に乗る前にエタノール消毒した。旅行は全て自転車だった。彼にしろボクにしろ,個人経営とはそうしたものだ。

ボクらは三回のワクチン接種とウイルス自体の重症化リスクの低下に伴って,今年に入ってから徐々に緩めている。彼はほとんど変わらずストイックな暮らしを続けている。そろそろ,少しは緩めた方がいいというのが,奥さんとボクの一致した見解である。作戦は単純である。一般的にこういう場合,たいてい誰でもなおみには弱い。

あわしまマリンパークは日曜というのに人口密度がきわめて低かった。これはもう感染リスクのある観光地の範疇には入らない。

施設はほとんど昭和のまま。

水槽はアジとかイワシとかの率が高い。

辛うじて珍しい魚。

漁港ではない。イルカショー会場である。

豪華なプールよりイルカにとってはよい環境かもしれない。

カエル館…入場料値上がりに伴って別料金が廃止になったそうである。以前は別料金を取っていたということの方に驚きを禁じ得ない。

ペンギンが鳴いている。

獅子岩…

小雨がぱらつく天気。富士山が見えないのが残念だが,晴れていたらとても歩けない。

…と,そのとき!アシカショーが始まりまーす。とアナウンス。

アシカショー会場

会場はプアだが,アシカはかわいい。

謎のトンネル…トンネルの向こうには…何もない。ただの海。

ボクたちは久しぶりによく笑った。友だちはいいものだ。

レストランまでは刺激が強すぎるので,夕飯はスーパーで生地を買って,なおみが得意のピザを焼いた。渋滞解消待ちしながらおしゃべりしていたら21時になってしまった。

23時に町田に寄った。日中,義母が庭を大量に整理している途中で気分が悪くなってしまった。明日が月に二回しかない庭木のゴミ出し日なので,暗がりの中で草や枝を集め,10束近くも紐でくくった。働いた。働いた。スイカは三島で持たされたもの。

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