01/国境

Oct, 2019


土曜の仕事を終えて外に出ると下弦間近の月が東の空に昇っていた。こんな時間に旅にでることは2年ぶりだ。

尻尾を全開に振ってお出かけにはしゃぐ愛犬はもういない。 



だが,さらに既往を鑑みれば犬を飼う以前の旅はいつも二人きりで出掛けたものだった。ボクたちはその頃の旅を思い出そうとしている。

第二東名を三河に入ったあたりで力尽きて寝た。 

 



朝,高速を下りて北へ向かう途中,小原というところに和紙の里があった。和紙と聞けばすっかり美濃和紙のことだと思いきや小原はまだ愛知県だった。



尾張でもこの付近は美濃,三河と国境を接する。さらに戦国時代には甲信方面から武田勢が侵入してくる言わばホットスポットであった。それは一帯が山城の密集地帯になっていることからも知れる。長久手,長篠,三方ヶ原などの古戦場からも近い。



明智光秀ゆかりの地を訪ねる旅の出発地点にはまことふさわしい。空は麗らかに晴れて旅日和の初日である。

小原は四季桜の名所としても知られているそうだ。そぞろ歩いてみれば早咲きの蕾がいくつもほころんでいるのを見つけた。

 



満開となればさぞ美しかろう。 



和紙の直売店で母へのお土産にはがきを購った。

囲いの中でたぶんコウゾかミツマタと思われる植物が秋風に揺れていた。


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