Apr.2012


中立ベルト地帯にある国境審査場を通過してアンドラ公国に入りました。

ヨーロッパのほとんどの国では,現在,日本の県境と同じくらいの容易さで国境を越えることができますが,アンドラはEU非加盟国なので昔懐かしい国境のものものしさが残っています。もっとも入国はあまり厳しくありません。高速料金所のようなブースから,日本のパスポートをちらりと見た係官が「行け」と,あごをしゃくりました。おそらく出国するとき(と言うよりEU圏に入国するとき)は,もう少しきちんとした検査があるでしょう。

タックス・ヘイヴンと言います。

経済に恐ろしく疎いボクの解説なのでまったくあてになりませんが,タックスヘイヴンとは租税回避地のことです。もともと産業のない島国などが,外資の法人税や間接税を無税にすることで,国際物流の中継拠点となるために考案したそうです。ところが,世界中にタックスヘイヴンの国や地域が乱立するようになると,大企業や富豪の節税対策上の必要悪となり,果ては暴力団やマフィアのマネーロンダリングに利用されたり,金融危機に対する国際協調対策を遅らせたり,世界の金融,経済にとって大きな弊害となってきています。

およそEUにとっては目の上のたんこぶのような国なのですが,ショッピング目当ての観光客や周辺国の住民にとっては,関税がなく物価が安い文字通りのヘイヴン(天国)なわけです。

さてさて大企業でも大富豪でもないし,ブランド品にも縁のないボクが,なぜアンドラを行き先候補地に入れていたかというと,それには深~いわけがある…と思うでしょ。そう,あるんです。実は名前がおいしそうだったからなのです。フランス,アンドラ,モナコ…ね。モンブランにどら焼き,モナカを連想しちゃいますよね,このへんの国名。 ドレミは

「どら焼きなんか全然思い浮かばない。ばっかじゃないの。」

ばかじゃないのまで言うんですよ。想像力が乏しいのです。


まあ,そういうわけですからアンドラにいったい何があるのか全く知らないのです。そこで ドレミが街の入り口にある観光案内所で聞こうとしました。

「Hello!Would you please tell me…」

…案内所の男は英語を1語も知りませんでした。 やる気ありません。


やがて一本道の道路はアンドラの首都アンドラにさしかかります。

あ,こういうことね。

谷あいの僅かな盆地にタックスフリーのお店がひしめいています。 ショッピングの客を目当てに飲食店も軒を連ねます。

せまい曲がりくねった道のあちこちで,ナマズが身震いしながらエンストします。

そのときボクの頭の中を稲妻が走ったのです。

そうです!

今のボクにはヘイヴンに用があったではないですか。折りしもスーパー円高(2012年当時)。関税なしなら,日本製のカメラが破格で買えるかも。欲しいカメラがあるんですよ(笑)


街歩きではいつもだらだらと後ろからついてくるボクが,いきなり先に立って店を探し始めたものですからドレミが驚いています。

あった,あった,ありました。日本製のカメラがずらりと並ぶデジタル家電店。店主がカタコトですが英語を使っています。

「ハロー♪5Dマーク3,いくらですかー?」
「え?5Dはまだマーク2までしか作られてないよ,知らないのか?」

(5D MarkIIIの公式発表は前月の3月2日,世界同時発売は22日)

…残念ながら,世界中のファンが待っていた新型フルサイズ機が,末端の怪しげな小売店まで届くのにはまだ時間がかかるようです。


こうしてアンドラでのボクの用は1分で終わってしまいました。

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