Apr.2012
こんな熱海か箱根のような観光地で宿を取るなんて,ボクたちの旅ではかなり意外な展開です。メインストリートに戻り,最初に目についたのはその名も「ホテル・ピレネー」,三ツ星です。
アンドラはホテルも安いと聞いていましたが,この風格にはさすがに臆してしまいます。
「あたし,いちおう聞くだけ聞いてみる。」
ドレミの勇気にはいつも感心します。見上げるような大きなガラス戸を両手でぐいっと押して中に進みます。 「ORA(オラ)~」
ボクも慌てて後に続きます。
こじんまりとはしていますが,清潔なロビーに直径2mはあろうかと思われるシャンデリアが輝いています。
ダメだ,こりゃ。いくらなんでも豪華すぎる。
ところが意外にも頭の禿げたいかにもフランス人っぽいフロントの男とドレミの交渉が順調に進んでいるではありませんか。あらら,とうとうドレミが逃げ腰のボクを手招きします。
「65ユーロ(6825円/1部屋)だって♪」
えー!!
後ろからすかさず禿フロントが揉み手をしながら下手な英語でフォローしてきました。
「インクルード(含) パルキン(たぶんパーキング)」
さっきまでシャンデリアにびびっていたくせに突然胸を張るボク。
オレの車。メルセデスなんだけどさ,ちょっと図体が…でっかいぜ。OK?
「OK,OK,アーンド インクルード ブレックファスト」
そう言いながら,禿フロがまるで映画に出てくるようなレストランを指差してアピールしています。
「ふーん,あ,そう。…って,なんとレストランの朝食付きー!!泊まります泊まります,どうか泊めてくださいませ。」
アンドラ…物価安いです。旅行会社が一括して手配するツアー旅行と違って,ボクたちのような庶民の個人旅行で三ツ星ホテルに泊まれるチャンスはなかなかありません。
「やったー♪豪勢~♪」
炎天下に歩いたから疲れたな。夜までちょっとベッドで休むか(…ボクには下心,是あり)。
「え?冗談でしょ,せっかくタックスフリーなのに。シュウは横になってなよ。あたし,向かいのショッピングモール行って来る~!」
なんとパワフル。それもブランド物のバッグや靴でも買いに行くならまだわかります。どうせ,さんざん見て回った挙句にTシャツ1枚とかキーホルダーとかくだらないものを買ってくるのが関の山なのです。なんだか貧乏性の妻が急に不憫になってきました。
よし!オレが小遣いから1万円寄付するよ。それで好きなもの買って来い!
「え?でも,もう出発前にシュウの財布から,旅行のお小遣い用に5万円もらって両替してあるんだけど…」
ええー!?
「行ってきまーす。鍵持ってくね,寝てていいよ。」
確かに…,ない。そう言えば,ずいぶんと財布が軽いなあと思っていたのですが…。